ケルティックジュエリー&クラダーリング専門店【ボウディッカ】

ケルティックデザイン史概説

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ピクト

ここでちょっとアイルランドからスコットランドに寄り道して、ピクト人とピクト美術についてお話ししましょう。

スコットランド人の直接の祖先だとも言われるピクト人。ピクトとは、ブリタニアを足掛かりにカレドニアと呼ばれた北方の地に侵入して来たローマ人が、全身にボディペインティングまたはタトゥーを入れていた土着部族の戦士たちを見て「色を塗りたくった連中」(ラテン語で Picti)と呼んだことに由来すると伝えられ、彼ら自身が本当は何と名乗っていたかは不明です。Pexa かそれに類した発音の部族名から来ているという異説もあります。古代にはローマ帝国の武力攻撃に激しく抵抗して民族の独立を守り抜きましたが、紀元4世紀にローマが軍団を引き揚げるとほぼ入れ替わりに、アイリッシュ海を渡って移住してきた、スコットと呼ばれるアイルランド北部アルスター地方の部族が、西部沿岸のアーガイル地方にダルリアダという王国を築き、純粋なピクト人の部族は徐々に東部や北部の地方へと追いやられてゆきました。地位・財産・土地を女子が相続する女系制社会のピクト人と、男系社会のスコット人との間には、摩擦と融合の歴史が400年近くも続いたのです。紀元847年、スコット人の王ケネス・マック・アルピンがピクト人の女王と結婚してその広大な領土を相続。かつてのピクトランドがスコットランドに統合された後は、ピクト古来の伝統はごく一部に残されたのみと言われます。

ピクト美術---ピクティッシュ・アニマル 渦巻き文様や組紐文様、そしてアイルランドのもの(“タラブローチ”)と同じ形の準環状ブローチなど、何がピクト美術をケルト美術から区別しているのか、遠い国の私たちにとって一目ではよくわかりません。ピクト美術の最も目立つ特徴として、人物や動物---牛、馬、犬といった身近な家畜、鹿、猪、狼、熊、ヘラジカといった狩の獲物、水鳥や鮭、アザラシ、イルカ、クジラなどの海の動物、そしてそれらが混合した---たとえば上半身は馬で下半身はイルカのような架空の生き物を写生し、渦巻き文様で飾って生命を与えたアニマルシンボルが挙げられるでしょう。スコットランド西岸のアイオナ島で着手され、アイルランドのケルズに運ばれて完成した聖書写本「ケルズの書」にも、印象的なアニマルシンボルが多数描き込まれて、中世アイルランド文化のアイコンのように扱われてきましたが、本来はアイルランド人のオリジナリティというより、ピクト美術の強い影響と言った方が正解でしょう。

Zロッドとダブルディスク そしてピクトにしか見られない特異なシンボルが、Zロッド(Z字状に折れ曲がった、飾りのついた殻竿のようなもの)とダブルディスク(繋がった2つの円盤)。右画像のようにZロッドと円盤が組み合わされたシンボルもあり、紀元前のかなり古い時代から、石板彫刻やブロンズ製の装飾に数多く残されているそうです。他にもクレセント(三日月)やスパイラル(渦巻き)など。それぞれのシンボルが何を意味するのか謎ですが、女系社会だったピクトでは、女神(地母神)と何らかの関わりがあることは間違いがなさそうです。

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