ケルティックジュエリー&クラダーリング専門店【ボウディッカ】

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ケルズの書

ローマ帝国すら手を出さなかった最果てのアイルランドにも、紀元5世紀の聖パトリックの伝道で---正確には聖パトリック以前にも紀元3世紀頃から波状的に、キリスト教信仰がもたらされ、人々の心に深く根づきました。古代には部族王どうしが覇権争いに明け暮れていたアイルランドに、キリスト教は不思議なほど流血を見ずに受け入れられ、多くのドゥルイドがキリスト教の聖職者に転身し、土着文化や古代伝承は、潰されたり滅ぼされたりすることなく、キリスト教の中で生き続けました。以後数百年のうちに、比類のないキリスト教美術がアイルランドで花開き、優れた聖書学者や教理学者が多数アイルランドの修道院から輩出、彼らは教師や指導者としてドイツ、フランス、イタリアへと派遣され、また組紐文様や迷路文様などの複雑精緻なデザインを施した聖具や装飾写本がヨーロッパ各地へと輸出されました。中世初期のヨーロッパでは、アイルランドはまさに文化発信サイトだったのです。

左右2葉の図版は、紀元800年頃に制作された聖書の手写本「ケルズの書」The Book of Kells のほんの一部ですが、アイルランド美術の精髄と言って過言ではないでしょう。今日“ケルト文様”“ケルティックデザイン”と呼ばれる抽象的パターンはどれも「ケルズの書」の中に見いだすことができるか、そのバリエーションです。「ケルズの書」の飾り文字は、ケルティックデザインの最も洗練された手本のひとつでもあります。左図の上段には渦巻き文様と“トリニティ”と呼ばれる組紐文様、下段には“グリークキー”(ギリシャ鍵)と呼ばれる迷路状の文様が、それぞれ人物の顎ひげになって組み込まれているのが見られます。ですが前述のように、古代アイルランド人は彼らの宇宙観を文書に残しませんでしたから、それぞれの文様の具体的な意味は、古代美術史やキリスト教図像学の研究で解明、特定されつつありますが、まだ謎が残されています。

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