IRISH-ON-FILM INDEX
野村さんの音楽コーナー


UPDATE:2001年5月7日

目次





映画に使われている民謡リスト

ここでは野村雅之氏作成の民謡リストをご紹介します。最初の掲載は1997年11月11日、今回3年半ぶりの改訂で曲名を加えて充実しました。


1970年代、1980年代のものが少ないのですが、理由は良くわかりません。たぶん、昔はジョン・フォードの様なアイルランド系の監督(第一世代というべきでしょうか)がおり、俳優も多くいたのが、この時代はテーマがハリウッド映画の性格がかわってきて、「古き、良きハリウッドの時代」から「時代性にあったテーマの映画づくり」にかわってきた、又脇役を含め、俳優もかわってきたのかなあと思ったりもしています。全部をみている訳ではないので、全く個人的感想です。
1990年代はケルト音楽の復興というかエンヤに代表される多くのミュージシャンのアメリカでの活躍から、又、全世界的なエスニックな文化の見直しからアイルランドの時代性に視点が合ってきたし、アイルランド人の世界への発信という点から映画も増えてきたのかなあとリストを見つつ考えております。
小生の一番は「静かなる男」と「長い灰色の線」です。(1997年11月11日コメント)

最近のアイルランド映画はサウンドトラック盤も出ていますが、オリジナルスコアが多く、民謡を使っていないものが多いですね。(2001年5月3日コメント)

年代映画タイトル民謡曲名(地域)
1924年 アイアン・ホース JF Drill, Ye Tarriers, Drill (Ireland)
1930年 河上の別荘 JF The Prisoner's Song (USA)
My Bonnie Lies Over the Ocean (USA)
キング・オブ・ジャズ Killarney (Ireland)
Long, Long Ago (England)
Comin' Thru the Rye (Scotland)
1934年 プリースト判事 JF Dixie (USA)
Love's Old Sweet Song (England)
恋の一夜 The Last Rose of Summer (Ireland)
1935年 バーバリー・コースト Auld Lang Syne (Scotland)
男の敵 JF The Rose of Tralee (Ireland)
Minstrel Boy (Ireland)
Believe Me, If All Those Endearing Young Charms (Ireland)
ベンガルの槍騎兵 Mother Machree (Ireland)
The Keel Row (Scotland)
1936年 メアリー・オブ・スコットランド JF Loch Lomond (Scotland)
大自然の凱歌 Aura Lee (USA)
Carry Me Back to Old Virginy (USA)
桑港(サンフランシスコ) The Kerry Dance (Ireland)
1937年 暁の翼 Mother Machree (Ireland)
Killarney (Ireland)
Believe Me, If All those Endearing Young Charms (Ireland)
軍使 JF Auld Lang Syne (Scotland)
シカゴ The Irish Washwoman (Ireland)
Carry Me Back to Old Virginy (USA)
1938年 素晴らしき休日 Camptown Races (USA)
1939年 ガンガ・ディン Will Ye No Come Back Again (Scotland)
Auld Lang Syne (Scotland)
駅馬車 JF Bury Me Not On the Lone Prairie (USA)
庭の千草 The Last Rose of Summer (Ireland)
モホークの太鼓 JF Yankee Doodle Dandy (USA)
1940年 カンサス騎兵隊 The Wearing of the Green (Ireland)
リトル・ネリー・ケリー It's a Great Day for the Irish (Ireland)
The Pretty Girl Milking Her Cow (Ireland)
北西への道 Drink to Me Only with Thine Eyes (England)
哀愁 It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
Auld Lang Syne (Scotland)
Loch Lomond (Scotland)
Minstrel Boy (Ireland)
果てなき船路 JF When Irish Eyes Are Smiling (Ireland)
The Rakes of Mallow (Ireland)
1941年 いちごブロンド The Band Played On (Ireland)
美女ありき The Londonderry Air (Ireland)
ヨーク軍曹 Dixie (USA)
追憶 It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
幽霊紐育(ニューヨーク)を歩く The Last Rose of Summer (Ireland)
1942年 心の旅路 She Is Not a Daisie (Scotland)
It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
壮烈第七騎兵隊 Garry Owen (Ireland)
鉄腕ジム Dear Old Donegal (Ireland)
Mother Machree (Ireland)
Auld Lang Syne (Scotland)
1943年 淑女と拳骨 Come Back to Erin (Ireland)
1944年 わが谷は緑なりき JF Men of Harlech (Wales)
我が道を往く Too-Ra-Loo-Ra-Loo-Ral (Ireland)
1946年 荒野の決闘 JF My Darling Clementine (USA)
素晴らしき哉人生! Auld Lang Syne (Scotland)
ジョルスン物語 On the Banks of the Wabash Far Away (USA)
アンナとシャム王 Home Sweet Home (England)
1947年 ブルックリン横丁 Molly Malone (Ireland)
Annie Laurie (Scotland)
追跡 The Londonderry Air (Ireland)
1948年 アパッチ砦 JF Garry Owen (Ireland)
三人の名付親 JF The Street of Laredo (USA)
1949年 黄色いリボン JF The Girl I Left Behind Me (Ireland)
The Irish Washwoman (Ireland)
セントルイス Yankee Doodle Dandy (USA)
春の珍事 Little Nelly Kelly (Ireland)
ブロードウェイのバークレイ夫妻 My One and Only Highland Fling (Scotland)
1950年 リオグランデの砦 JF I'll Take You Home Again, Kathleen (Ireland)
Dixie (USA)
西部の二国旗 Dixie (USA)
Battle Hymn of the Republic (USA)
1951年 歌劇王カルーソー The Last Rose of Summer (Ireland)
ショーボート Auld Lang Syne (Scotland)
On Moonlight Bay It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
1952年 栄光何するものぞ JF It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
静かなる男 JF Wild Colonial Boy (Ireland)
Believe Me, If All Those Endearing Young Charms (Ireland)
1953年 モガンボ JF Comin' Thru the Rye (Scotland)
太陽は光り輝く JF My Old Kentucky Home (USA)
Long, Long Ago (England)
勝負に賭ける男 Mother Machree (Ireland)
Auld Lang Syne (Scotland)
1955年 長い灰色の線 JF The Irish Washwoman (Ireland)
The Wearing of the Green (Ireland)
The Girl I Left Behind Me (Ireland)
1956年 荒鷲の翼 JF The Wearing of the Green (Ireland)
1958年 SOSタイタニック Off to Philadelphia (Ireland)
The Kerry Dance (Ireland)
ギデオン JF London Bridge Falling Down (England)
1959年 四つの願い Pretty Irish Girl (Ireland)
The Rakes of Mallow (Ireland)
The Harp That Once Through Tara's Hall (Ireland)
ペチコート作戦 Auld Lang Syne (Scotland)
渚にて Waltzing Matilda (Australia)
騎兵隊 JF Dixie (USA)
The Bonnie Blue Flag (USA)
五つの銅貨 Battle Hymn of the Republic (USA)
1960年 ポリアンナ When You and I Were Young, Maggie (Ireland)
1962年 西部開拓史 Home on the Meadow (Greensleeves) (England)
1965年 シェナンドー河 Shenandoah (USA)
1967年 卒業 Scaborough Fair (England)
1968年 フィニアンの虹 How Are Things Are in Glocca Morra (Ireland)
1970年 暁の出撃 It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
シャーロック・ホームズの冒険 Loch Lomond (Scotland)
ワーテルロー The Girl I Left Behind Me (Ireland)
1971年 小さな冒険者 ? (Ireland)
1975年 王になろうとした男 The Minstrel Boy (Ireland)
1976年 ニッケルオデオン I'll Take You Home Again, Kathleen (Ireland)
1981年 Uボート It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
1982年 グレイフォックス Sweet Betsy From Pyke (USA)
1987年 太陽の帝国 Suo Gan (Wales)
1989年 ファミリービジネス Danny Boy (Ireland)
鯨が来た日 It's a Long Way to Tipperary (Ireland)
1990年 メンフィス・ベル Danny Boy (Ireland)
Amazing Grace (Scotland)
ミラーズ・クロッシング Danny Boy (Ireland)
1991年 ハイランダー2 Amazing Grace (Scotland)
L.A.ストーリー Amazing Grace (Scotland)
1993年 ゲティスバーグ The Minstrel Boy (Ireland)
Kathleen Mavourneen (Ireland)
1995年 ナッシング・パーソナル ? (Ireland)
1996年 ブラス Danny Boy (Ireland)
マイケル・コリンズ She Moved Through the Fair (Ireland)
友情の翼 Believe Me, If All Those Endearing Young Charms (Ireland)
She Moved Through the Fair (Ireland)
1997年 ザ・ボクサー Danny Boy (Ireland)
恋はワンダフル Carrickfergus (Ireland)
クィーン・ヴィクトリア 至上の愛 ? (Scotland)
1998年 ウェイクアップ・ネッド The Parting Glass (Ireland)
The Mountain of Mourne (Ireland)
ネフュー ? (Ireland)

  • JFとマーク付きの映画はジョン・フォード監督作品。
  • "It's a Long Way to Tipperary" は民謡ではなく第一次大戦時の流行りうたですが、このカテゴリーに入れてあります。その他、ミュージカルからの歌や一部流行りうたも入っています。
  • "Amazing Grace" はもっとあります。お葬式のシーンで演奏されることが多いです。
  • 日本未公開の映画でビデオ入手したものは英語のタイトルになっています。
  • ?マークのものは皆さんからご教示ください。





1900年頃のアメリカの音楽シーン

「ブクッルリン横丁」はニューヨークの中でもアイルランド系住民の多かった1900年頃のブルックリンが舞台のヒューマン・ドラマです。主人公一家ノーラン家のパパの本職はウェイターですが、どこかのレストランの専属というわけではなく、組合から仕事を回してもらってはパーティ会場に出向き、余興に得意のアイルランド民謡を歌って祝儀を稼ぐという不安定な労働形態でした。今日でもクラブのバンドがタキシードを着ているのは、本来ウェイターとしての仕事の合間に演奏していたからだとも言われています。パパの夢はいつの日か偶然パーティに出席していた興行主に自分の歌を認められ、歌手としてブロードウェイの大舞台で脚光を浴びることでした。が、そんな偶然が現実には起こるはずもなく…。

アイルランド文化研究会(http://www.ne.jp/asahi/ireland/bunka-kenkyukai/)で1997年7月、この映画を題材にアイルランド系移民の歴史と生活を取り上げた時、私から野村さんに次のような質問をしました。

  • 映画の背景となった1900年頃のアメリカでどんな音楽が流行したのか?
  • その中でアイルランド民謡はどの程度受け入れられたのか?
  • 「アメリカの歌声」と称えられたアイルランド系の大歌手ビング・クロスビーについて


この映画は父親が "SING WAITER"という事で音楽の点からも興味大です。勤めから帰ってくる時にいつも歌っているのが民謡の "Cockles and Mussels" ("Molly Malone") ですし、娘とハモるのは "Early in the Morning"、ピアノを弾きながら歌うのが "Annie Laurie"、結婚披露宴で何を歌ったかと聞かれて出てくるのが "My Wild Irish Rose", "When Irish Eyes Are Smiling" という具合ですが、これ以外にも当時流行っていた音楽がバックに流れています。映画のはじめからおわりまで注意して聞いて見るとこんな音楽までという位多くの音楽がつかわれています。当時流行していた音楽、賛美歌、アイルランド民謡だけでなくイタリア民謡やクラシックの軽い音楽まで盛り沢山です。

当時(19世紀の終わりから20世紀の初め)どんな音楽がアメリカで流行っていたというご質問ですが、青木啓さん、野口久光さん、中村とうようさん等の書かれたものを参考にしますと、

1)ミュージカルはまだで、ボードヴィル、ショウやオペレッタ中心で、ボードヴィルでは結構アイルランドものが幅をきかせています。やはり、移民が多かったのでその影響で、只、苦しい時の事より楽しい時の方を思い出したいという事でそういった楽しいメロデイの多くの名作がつくられています。例えば

  • Mother Machree (1910)
  • When Irish Eyes Are Smiling (1912)
  • My Wild Irish Rose (1899)
  • Too-Ra-Loo-Ra-Loo-Ral (1914)
  • When You and I Were Young, Maggie (1866)
  • Sweet Rosie O'Grady (1896)
等がこの時代の作品です。「フィニアンの虹」の中でフレッド・アステイアが "Cheap Irish Music" という台詞を言うシーンがありますが現在のミュージシャンはほとんど演奏していません。映画では結構でてきますし、一部の曲はジャズでも採用されていますが。

2)映画のパパが歌っていた頃は、まだまだこれらの曲が生き生きとしていた頃でしょうし、こうした傾向の歌がステージで歌われていたと思います。レコードというには?でしょう。ジョン・マコーマックというアイルランドの有名なテノール歌手(1884-1945)位であれば結構レコードは残っていますが。"Mother Machree" は彼がアメリカでのステージでよく歌ったという記録が残っているそうです。こういった曲はセンテイメンタルですし、アイルランドからの移民だけでなく、当時のアメリカ人全体でヒットした様です。

3)この頃流行った曲で今も残っているものは多くあります。

  • The Sidewalks of New York (1894)
  • After the Ball (1892)
  • When You Were Sweet Sixteen (1898)
  • In the Good Old Summertime (1903)
  • Give My Best Regards to Broadway (1904)
  • Meet Me In St. Loius (1904)
  • In the Shade of the Old Apple Tree(1905)
  • Wait Till the Sun Shine, Nellie (1905)
  • Shine On Harvest Moon (1908)
  • By the Light of Silvery Moon (1909)
  • Let Me Call You Sweet Heart(1910)
  • Alexander's Ragtime Band(1911)
  • Moonlight Bay (1912)
  • Danny Boy (1913)--アイルランド民謡のロンドンデリーの歌に新しい詞がつけられて、J・マコーマックの歌で大ヒット
  • Swanee (1919)
  • Till We Meet Again (1918)

4)ビング・クロスビーが独り立ちしてレコードが大ヒットしたのは1931年の "I Surrender Dear" で彼は上記の多くの歌をレコード化していますがずっと後です。 "Too-Ra-Loo-Ra-Loo-Ral " は1944年、映画 「我が道を往く」の時です。これらの歌はミッチ・ミラー合唱団がレパートリーにしていました。





「ダニー・ボーイ」について

「ダニー・ボーイ」という曲について、教えていただけないでしょうか。アイルランドの映画によく出てくるように思うのですが、アイルランドの古い民謡か何かなのでしょうか。ちなみに「ストレート・トゥ・ヘル」や「白馬の伝説」、「ミラーズ・クロッシング」、「ザ・クーリエ」等の中でも使われていました。【Edie】

「ダニー・ボーイ」の原曲は "London Derry Air" というアイルランド民謡です。アイルランド北西部(北アイルランド)の州、ロンドンデリーの名を取ったこの歌は1855年にアイルランドの民謡収集家ジョージ・ペトリーによって出版されましたが、1913年、ウエーザリーが「ダニー・ボーイ」の歌詞をつけ、アイルランド出身のテノール歌手ジョン・マコーマックの愛唱歌として有名になりました。第二次世界大戦中にはビング・クロスビーのレコードでリバイバルし、近年ではハリー・ベラフォンテが歌って有名になり、100曲以上の多くのレコードが出ています。映画では、「ミラーズ・クロッシング」等の他に、「ファミリービジネス」、「メンフィス・ベル」、「美女ありき」などで使われています。「ファミリービジネス」ではお葬式の際の歌として使われていました。【野村雅之】



このページの記載内容の著作権は野村雅之氏にあります。IRISH-ON-FILM INDEX(萬崎めぐみ)は野村雅之氏の直接の承認を得てこれを加工・掲載しています。

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