IRISH-ON-FILM INDEX


フールズ・オブ・フォーチュン Fools of Fortune
1990年 イギリス 109分
パット・オコナー監督 メアリー・エリザベス・マストラントニオ イアン・グレン ジュリー・クリスティー マイケル・キッチン ショーン・マックロリー フランキー・マッカファーティ

マイケル・コリンズが独立戦争を戦っていた時代、アイルランドの上流階級に暮らす少年が、使用人が英軍のスパイであったことから悲劇に巻き込まれ、成長した後も宿命に翻弄される愛と復讐の壮大な物語です。アイルランド度から言えば最高位に属するのでは?主演は、「愛と野望のナイル」のイエン・グレン、ヒロインにメアリー・E・マストラントニオ。【竹内喜代子】


サークル・オブ・フレンズ Circle of Friends
1995年 アイルランド、アメリカ 100分
パット・オコナー監督 ミニー・ドライヴァー クリス・オドネル ジェラルディン・オロウ サフロン・バロウズ コリン・ファース アラン・カミングズ エイダン・ジレン

第二次大戦は敗戦国ばかりか、戦勝国でありながら国内に打撃を被ったイギリスなどの連合国側にも、戦後大きな価値観の断絶と転換をもたらした。アイルランドはこの戦争に参戦しなかったので、1945年を境とする価値観の断絶と転換を経験しなかった。アイルランドが今日なお倫理観・貞操観について超保守的である原因として考えられるのは、カトリック信仰とこの連続性だという話を、アイルランド近現代史研究者、岩見寿子氏から聞いた。この映画は1957年のダブリンの女子学生の貞操観を扱っている。だが、現実のとおりに奥ゆかしくてはドラマにならない。思いの他積極的で、仲間のひとりは妊娠中絶手術を受けにイギリスへ行かなければならないという由々しき事態にまで至る。「父母の時代の青春」が新鮮なのだろう、アメリカで大ヒットして「スモール・サークル・オブ・フレンズ」なるパロディも作られた。【マン】


夕陽のギャングたち Giu la Testa / Duck, You Sucker / A Fistful of Dynamite
1972年 イタリア 158分
セルジオ・レオーネ監督 ロッド・スタイガー ジェームズ・コバーン ロモロ・ヴァッリ マリア・モンティ

1913年のメキシコ革命を背景にしたマカロニ・ウェスタン。メキシコ人の盗賊(ロッド・スタイガー)と組んだジェームズ・コバーンの役がなぜかショーン・マロリーという名のIRA崩れ(独立闘争の挫折と失恋で亡命中)のダイナマイト屋で、最初のキャスティングではコバーンよりずっと若いマルコム・マクダウェルが予定されていたそうだ。同監督、クリント・イーストウッド主演の「続・夕陽のガンマン」と並んで反戦色が濃い。石上三登志氏が「セルジオ・レオーネ 父と子の虚説」という評論を書いており(『マカロニ・ウエスタン 復讐と快楽の美学』1995年PSC発行所収、初出は『映画評論』1973年11月号)、まじめに論ずるに値する傑作。【マン】


ラストマン・スタンディング Last Man Standing
1996年 アメリカ 101分 R
ウォルター・ヒル監督 ブルース・ウィリス クリストファー・ウォーケン アレクサンドラ・パワーズ デヴィッド・パトリック・ケリー ウィリアム・サンダーソン カリーナ・ロンバード ネッド・アイゼンバーグ マイケル・インペリオリ ケン・ジェンキンズ R・D・コール ブルース・ダーン レズリー・マン

黒澤明の「用心棒」が原作で、クリント・イーストウッドの「荒野の用心棒」、フランコ・ネロの「続・荒野の用心棒」と、マカロニ・ウェスタンで何度も使い古された同じ舞台(メキシコ国境のさびれた町)の同じ話だが、今度のは西部劇ではなくギャング映画、時代は禁酒法時代。町の権益を奪い合う2勢力の一方はイタリア系マフィア、もう一方はアイルランド系マフィアのドイルという男(デヴィッド・パトリック・ケリー)で、どちらも出身地のシカゴでは吹けば飛ぶようなチンピラに過ぎなかった。【マン】


モナリザ Mona Lisa
1986年 イギリス 104分 R
ニール・ジョーダン監督 ボブ・ホスキンス キャシー・タイソン マイケル・ケイン ロビー・コルトレーン クラーク・ピーターズ ケイト・ハーディ ゾイー・ナセンソン サミ・デイヴィス

出所したチンピラがロンドンの高級コールガールの運転手の仕事にありつくが、行方不明になっている妹分の少女娼婦 Cathy を探す依頼を受け、トラブルに巻き込まれる。主人公が Cathy と間違えた別の少女 May がアイルランド人。アイルランドの映画監督の出世頭であるニール・ジョーダンの初期の仕事の中で最も完成度が高い。(あらすじ訂正【Cheeky】)


バックドラフト Backdraft
1991年 アメリカ 135分 R
ロン・ハワード監督 カート・ラッセル ウィリアム・ボールドウィン ロバート・デ・ニーロ ドナルド・サザーランド ジェニファー・ジェイソン・リー スコット・グレン レベッカ・デモーネイ ジェイソン・ゲドリック J・T・ウォルシュ トニー・モッカス・Sr クリント・ハワード

シカゴの消防士一家の話だが、アメリカでは警官同様、消防士もまた伝統的にアイルランド系の職業。アイルランドの歌の合唱で景気づけしながら現場に駆けつける。署員たちのセント・パトリックス・デイ(だったか正確に憶えていないが)のパーティでは、盛装した少女たちがアイリッシュダンスを披露する。【マン】


ハムレット Hamlet
1990年 イギリス、フランス、スペイン 135分
フランコ・ゼッフィレッリ監督 メル・ギブソン グレン・クローズ アラン・ベイツ ポール・スコフィールド イアン・ホルム ヘレナ・ボナム・カーター スティーヴン・ディレイン ナサニエル・パーカー ジョン・マケネリー

プロダクション・デザイナーのダンテ・フェレッティ、コスチューム・デザイナーのマウリツィオ・ミレノッティ(いずれもアカデミー賞にノミネート)、かつて「ロミオとジュリエット」で世界をあっと言わせオペラの舞台監督としても活躍中のゼッフィレッリ、いずれのアイデアか知らないが、ストーリーはシェイクスピアの原作通りデンマーク王宮エルシノア城が舞台だが、視覚イメージは中世アイルランドそのもの。壁掛けの図柄はケルズの書の挿絵風、墓場にはケルト十字架が立ち、男達はタラ・ブローチみたいなものでマントを留めている。古代あるいは中世アイルランドを舞台にした映画がないので、ケルト的な雰囲気に浸りたい人はこれで我慢してください。ただしロケ地はウェールズらしい。「こんなのはシェイクスピアじゃない。ただのアクション映画だ」と多くのシェイクスピア研究家のひんしゅくを買った映画だが、「その(メル・ギブソンの)魅力は目にある。目が危険なのだ。これから紹介するどのハムレット映画に登場する主人公よりも、目に落ち着きがない。情緒不安定な若者そのもの。舞台と違って、映画はアップが使える。アップで撮ったハムレットの目、これがこの映画のサスペンスをかき立てているのである」と狩野良規氏は絶賛(『青山国際政経論集』第33号所収「シェイクスピア・オン・シネマ」(1995年))。【マン】


バリー・リンドン Barry Lyndon
1975年 イギリス 183分
スタンリー・キューブリック監督 ライアン・オニール マリサ・ベレンソン パトリック・マギー ハーディ・クリューガー スティーヴン・バーコフ ゲイ・ハミルトン マーリー・メルヴィン フランク・ミドルマス アンドレ・モレル レナード・ロシター マリー・キーン マイケル・ホーデン(語り)

18世紀中頃、7年戦争時代のヨーロッパを舞台に、アイルランド出身のギャンブラー、(架空の人物)レドモンド・バリーの波乱に満ちた半生を詩情豊かに描く。ショーン・オリアダ作曲、チーフタンズ演奏の挿入曲"Mna na h-Eireann"(ゲール語で「アイルランドの女達」の意)の調べは忘れ難い美しさ。ろうそくの明りだけで撮影したいがためにF値0コンマ台の怪物のようなレンズをキャノンに開発させ、18世紀の雰囲気を見事に再現した執念の撮影技術は今なお語り草だ。キューブリックは前作の暴力映画「時計じかけのオレンジ」に影響を受けたとみられる殺人事件が起きたイギリスでは行動しづらく、アイルランドでマスコミ排除の極秘撮影が行われたが、IRAを名乗る者からの脅迫に怯えたキューブリックはスケジュール半ばで突然姿をくらませ、残されたスタッフを困惑させたという。アイルランド文化研究会でこの映画を扱ったので、以下宮地裕美子氏の解説引用。「サッカレーの同名小説を原作に、主人公の旅立ちから欧州大陸放浪のエピソードまでを、映画は前半の第一部で描く。後半第二部は、心理的な葛藤を中心とした人間ドラマが軸となる。監督キューブリックは、波乱に富んだ男の生涯と18世紀ヨーロッパの田舎や貴族社会の風俗を細部に至るまで再現しようと試みた。まずは、原作の時代背景に極力忠実に添わせようとロケ地を慎重に選んだ。ようやく半年後、アイルランド・キラーニー、コーク、そしてウォーターフォードに絶好の場所を探し出した。だが、その上衣裳作りに1年半を費やし、時代考証に専門の軍事歴史家ジョン・モローを招くなど、作品の完成には2年を要することとなった。あくまでリアリズムに徹するキューブリックは、時代設定当時の照明の中心であった蝋燭の灯の雰囲気を出すため、何千本もの蝋燭を使用し、その中でも写せるカメラを自分で作ってしまった。また、エキストラの俳優を選ぶに当たっても、自分でオーディションをやるといった念の入れよう。すべてを自分の管理下におこうとする完璧主義者の監督の本領を発揮した。マリサ・ベレンソン(レディー・リンドン役)には、映画が完成して観客が見るまでは、外部の人間に何も喋らないようにと要求したというエピソードも伝わる。同年のアカデミー賞撮影賞、美術監督賞、衣裳デザイン賞、編曲賞受賞。」【マン】


ビーナス・ピーター Venus Peter
1989年 イギリス 94分
イアン・セラー監督 レイ・マキャナリー シニード・キューザック ゴードン・R・ストラハン デヴィッド・ヘイマン ジュリエット・カゾー キャロライン・パターソン ルイズ・ブレズリン エマ・ディングウォール アレックス・マカヴォイ ロビン・マッキャフリー

レイ・マキャナリー、シニード・キューザック等アイルランドの演技派ベテラン俳優を迎えて、オークニー島が制作した島おこし映画。海に生きるべくして生まれた主人公の少年役、ゴードン・ストラハンが良い味を出している。1989年6月15日に没したマキャナリーの遺作でもある。【マン】


ヒドゥン・アジェンダ (ブラック・アジェンダ 隠された真相) Hidden Agenda
1990年 イギリス 108分 R
ケネス・ローチ監督 フランシス・マクドーマンド ブライアン・コックス ブラッド・ドゥリフ マイ・ゼッターリング ジム・ノートン モーリス・ロエヴズ

サッチャー政権下1980年代初頭のベルファストで人権保護団体の活動家が殺される。ロンドンから派遣された刑事は捜査を阻む壁にぶつかる。イギリス政府の謀略と犯罪を描いた社会派ドラマ。【マン】


ピンク・フロイド/ザ・ウォール Pink Floyd-the Wall
1982年 イギリス 99分 R
アラン・パーカー監督 ロジャー・ウォーターズ音楽 ジェラルド・スカーフ:アニメーション ボブ・ゲルドフ クリスティン・ハーグリーヴズ ジェームズ・ローレンソン エレノア・デヴィッド ボブ・ホスキンズ

主人公の精神を病んだロック・スターを演じるボブ・ゲルドフはアイルランド人で、ライブ・エイドなどの社会的活動で英国女王の勲章を貰った。(個人的にはロックの人が国家から叙勲なんかされちゃおしまいだと思うんだけど。)「アウト・オブ・アイルランド ヒストリー・オブ・アイリッシュ・ロック」参照。【マン】


フィツカラルド Fitzcarraldo
1982年 西ドイツ 158分
ヴェルナー・ヘルツォーク監督 クラウス・キンスキー クラウディア・カルディナーレ ホセ・リュゴイ ミゲル・アンヘル・フエンテス ポール・ヒッチャー

希代のオペラ歌手カルーソーを招くためにアルゼンチンの奥地にオペラハウスを建設することを企て、資金作りのためにアマゾン上流のゴム材の輸送ルート開発に懸命になる、半ば狂気の男フィツカラルド。その名前はアイルランド名前ブライアン・スウィーニー・フィッツジェラルドがスペイン語化したもので、彼はアイルランド人だったという説明が冒頭に入る。だが本当の半狂乱はヘルツォーク監督の方で、エキストラのインディオばかりか主役のキンスキーまでもが彼に拳銃で脅されながらの強行撮影で病気になったとか何かで読んだ。 (以上は1997年記)

(以下は自己フォロー2001年記)「キンスキー 我が最愛の敵 Mein Iebster Feind-Klaus Kinski/My Best Fiend」(1999年、イギリス・ドイツ・フィンランド・アメリカ、95分、ウェルナー・ヘルツォーク監督・主演のドキュメンタリー)を見たら、上述の狂気の主はキンスキーの方だったとひっくり返っている。おそらく主観的にはどちらの言い分も正しく、客観的にはヘルツォークの言い分が真相に近いのだろう。キンスキーの横暴ぶりに、インディオ達が彼を殺してやろうかとヘルツォークに申し出てきたり、ヘルツォーク自身が彼を殺して自殺しようと本気で企んだことは真実らしい。それはさておき、「フィツカラルド」は当初、主人公にジェイソン・ロバーズ、その助手という役柄でミック・ジャガーを配して撮影されたが、途中でロバーズが病気になり、キンスキーに交代させるに当たって主人公の性格を大きく変えたようだ。ロバーズ&ジャガーで撮影されたフィルムが残っており、「キンスキー 我が最愛の敵」の中で見ることができる。フィツカラルドは異常な楽天家というのは同じなのだが、ロバーズのそれは底抜けに明るい楽天主義で、まさにアイルランド人的に演じられ、それがキンスキーで狂気に変じている。【マン】


フィニアンの虹 Finian's Rainbow
1968年 アメリカ 145分
フランシス・フォード・コッポラ監督 フレッド・アステア ペトゥラ・クラーク トミー・スティール キーナン・ウィン アル・フリーマン・Jr ドン・フランクス バーバラ・ハンコック

ブロードウェイ・ミュージカルの美しい映像化。誰も皆金持ちの国アメリカに幸福を求めてアイルランドからやって来た父娘と妖精レプラコンが、南部の黒人差別の残るタバコ栽培地帯、貧しい虹の谷に住みつき、楽しい騒動を起こす。アステアは老いが目立つが、アイリッシュダンス風にアレンジした得意のタップを披露する。「アイルランドの伝説では」と前置きして口から出まかせを言うあたりがいかにもアイルランド人だ。滑稽な黒人給仕の真似で「風と共に去りぬ」の黒人差別的な描写を露骨に批判したりもする。【マン】


フランキー・スターライト Frankie Starlight
1995年 アイルランド、アメリカ 101分 R
マイケル・リンゼイ・ホッグ監督 コーバン・ウォーカー アラン・ペントニー アンヌ・パリロー ガブリエル・バーン マット・ディロン ルディ・デイヴィス デアヴラ・モロイ ジョージナ・ケイツ

連合軍のノルマンディ上陸、フランス解放の直後、アメリカの軍艦に密航してダブリンから密入国した少女(アンヌ・パリロー)は、船中でアメリカ兵に強姦されて妊娠していた。彼女に同情し面倒を見てやった入国管理官(ガブリエル・バーン、プロデューサーも)は彼女と肉体関係を持つ。やがて妻の知るところとなるが、寛大な彼女は外国人の母子を家族同然に迎え入れる。フランキーは小人症の障害を持って生まれたが、ガブリエル・バーンの素晴しい人間教育を受けて幸せに育つ。だがかつて父の不倫の現場を目撃した長女エマが精神のバランスを崩したことから、母子は家族から自立しなければならなくなる。やがてアンヌ・パリローの前にかっこいいアメリカ人(マット・ディロン)が現われ…、という具合に波乱万丈の母の生涯を綴った本をフランキー(コーバン・ウォーカー)が出版すると、それを読んだエマ(ルディ・デイヴィス)が彼に会いに来て、そこから新たなドラマが始まる。フランキー役のコーバン・ウォーカーもアラン・ペントニーも名前が紹介されることがほとんどない。これでは俳優になって良い演技をした甲斐もないというものだ。大人のウォーカーはまあ普通の俳優だが、少年フランキー役のペントニーは既に男の渋さすら感じさせる何とも良い顔をしている。マット・ディロンの名を最初にもってきて若い女性を対象にした売り込み方はズレているのだけれど、これは日本だけのことではなくアメリカでも同じだった。【マン】


プランケット城への招待状 High Spirits
1988年 アメリカ 97分
ニール・ジョーダン監督 ピーター・オトゥール ダリル・ハンナ スティーヴ・グッテンバーグ ベヴァリー・ダンジェロ リーアム・ニーソン ピーター・ギャラハー ジェニファー・ティリー レイ・マキャナリー ドナル・マッキャン コニー・ブース リズ・スミス
借金苦を切り抜けるためにピーター・オトゥールが自分の城を観光ホテルとして開放、幽霊が出ると宣伝したら、本当に幽霊が出た、というドタバタ喜劇だが、どうしたことか私には全然面白くない!今どき流行の「オバカ」映画の1本と考えればよいのか。マンザキじゃだめだ、自分が解説したいという人ぜひお願いします。【マン】


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