IRISH-ON-FILM INDEX


風と共に去りぬ Gone with the Wind
1939年 アメリカ 222分
ヴィクター・フレミング監督 ヴィヴィアン・リー クラーク・ゲイブル レスリー・ハワード オリヴィア・デ・ハヴィランド トーマス・ミッチェル バーバラ・オニール ヴィクター・ジョリー ローラ・ホープ・クルーズ ハッティ・マクダニエル オナ・マンソン ハリー・ダヴェンポート

南北戦争前後の南部が舞台の、メロドラマと言うにはスケールが大きい叙事詩。ご存じ主人公スカーレット・オハラはアイルランド移民の娘で土地に執着し、自分の相続地に古代アイルランドの聖地と同じ「タラ」と名付ける。アイルランド人が土地に見せる執着心は「遥かなる大地へ」や「ザ・フィールド」でもっと顕著に表現される。後に「欲望という名の電車」でじつは凄い演技力の持ち主だったことを見せるヴィヴィアン・リーはインド生まれのアイルランド人。共同脚本には「華麗なるギャツビー」の作家スコット・フィッツジェラルドも加わっていたが採用されていないらしい。原作者マーガレット・ミッチェルはレット・バトラーのキャラクターをはなからクラーク・ゲイブルのイメージで描いたと何かで読んだことがある。半世紀以上経て続編「スカーレット」が創作された。【マン】


スカーレット Scarlett
1994年 アメリカ 360分 (TV)
ジョン・アーマン監督 ジョアンヌ・ワリー・キルマー ティモシー・ダルトン ジョン・ギールグッド アン・マーグレット ショーン・ビーン コルム・ミーニー バーバラ・バリー スティーヴン・コリンズ アナベス・ギッシュ ジョージ・グリツァード ジュリー・ハリス メリッサ・レオ ジーン・スマート ジョン・カヴァナー ルース・マッケイブ

風と共に去りぬ」の続編としてアレクサンドラ・リプリーが書き下ろした。レット・バトラー(ティモシー・ダルトン)の第2子を宿しながら彼に離婚を申し渡され、失意のスカーレット(当時ヴァル・キルマーと結婚していたイギリス人女優ジョアンヌ・ワリー)は従兄弟のコルム・オハラ神父(コルム・ミーニー)と一緒にアイルランドに渡り本物のタラを訪れる。親類達が英国人地主によって苦しめられているのを見かねた「富豪のアメリカ婦人」の彼女は、正体は性的加虐嗜好のフェントン伯(ショーン・ビーン)から先祖の屋敷を買い戻し、ダブリンの社交界でもまた勇名を轟かすが、競走馬を買いに来たバトラーと偶然再会。一方神父の身でありながら従姉妹に恋を告白したコルムは、じつは英国への反乱を企てるフィニアン党の一員で…と波乱万丈っぽく作ってあります。アイルランド近代史のおさらいにもなります。「私の父はアイルランド王だったのよ」と叫ぶスカーレットをバトラーが「アイルランド系の連中は皆そう言うんだ。いったいアイルランドには何人王様がいるんだね」とからかうシーンでちょっと笑えた。【マン】


遥かなる大地へ Far and Away
1992年 アメリカ 140分
ロン・ハワード監督 トム・クルーズ ニコル・キッドマン トーマス・ギブソン ロバート・プロスキー バーバラ・バブコック コルム・ミーニー アイリーン・ポロック ミシェル・ジョンソン シリル・キューザック クリント・ハワード ランス・ハワード

家と畑を取り上げられ、けんかで国にいられなくなった小作人の小倅が、勝ち気な地主の娘を連れてアメリカに移民。ボストンで素手の賭けボクシングに体を張って稼いだ金も、アイルランド人のボスにまき上げられて一文無しに後戻り。その後中西部に移って念願の土地を手に入れる。トムとニコルの新婚共演が話題になった。シリル・キューザックの遺作。アイルランドでのロケ地はディングル他。【マン】


ザ・フィールド The Field
1990年 アイルランド 107分
ジム・シェリダン監督 リチャード・ハリス ジョン・ハート トム・ベレンジャー ショーン・ビーン ブレンダ・フリッカー フランシス・トメルティ ジョン・カウリー ショーン・マッギンリー ジェニー・コンロイ

ジム・シェリダンのデビュー作で、1930年代アイルランド西部、痩せた土地を守るためなら人殺しも厭わないという社会派ドロドロ劇。土地を買いに来たのはトム・ベレンジャー演ずる見も知らぬヤンキー(この映画では先祖の土地に舞い戻ったアイルランド系アメリカ人を軽蔑的にヤンキーと呼んでいる)。リチャード・ハリスに付きまとう道化役のジョン・ハートは前歯を抜いての熱演。ハートにはローレンス・オリヴィエのBBC版「リア王」の道化役もある。ラストで誤って父が息子を殺してしまうところは、アルスター伝説のクーフーリンの息子殺しを思い起こさせる。アイルランドが対外的には隠したがるトラベラー、ティンカーなどと呼ばれる非定住集団の存在を正面から見せてもいる。【マン】


クライング・ゲーム The Crying Game
1992年 イギリス 112分 R
ニール・ジョーダン監督 スティーヴン・レイ ジェイ・デヴィッドソン ミランダ・リチャードソン フォレスト・ウィテイカー ジム・ブロードベント ラルフ・ブラウン エイドリアン・ダンバー

カトリック系過激派が英国兵を人質に取るが、英国軍に潰され、ちりぢりになってロンドンに潜伏。北アイルランド駐留英兵役のフォレスト・ウィテイカーの演技は淀川先生も絶賛しておられるし、ストーリーのアイデアは面白いんだが…。テーマ曲を歌うボーイ・ジョージ・オダウもアイルランド人の子だそうな。【マン】


黒の復讐 (旧題:怒りの日) Hennessy
1975年 イギリス 103分
ドン・シャープ監督 ロッド・スタイガー リー・レミック リチャード・ジョンソン トレヴァー・ハワード ピーター・イーガン エリック・ポーター

ベルファストの一般市民ヘネシー(ロッド・スタイガー)が目の前で妻子を英軍に撃ち殺され、復讐を胸にロンドンに潜入する。女王臨席の日を狙って国会議事堂爆破を企む彼とそれを察知した警察との暗闘。【マン】


クロムウェル Cromwell
1970年 イギリス 145分
ケン・ヒューズ監督 リチャード・ハリス アレック・ギネス ロバート・モーリー ドロシー・タティン フランク・フィンレイ ティモシー・ダルトン パトリック・ワイマーク パトリック・マギー ナイジェル・ストック チャールズ・グレイ マイケル・ジェイストン ジェフリー・キーン

ピューリタン革命(1642〜49)を描いた歴史大作「学芸会」映画。映画はチャールズ1世(アレック・ギネス)の処刑と共和制樹立で終わるが、この後クロムウェルは大軍を率いてアイルランド人の土地を片端から奪ってゆくことになる。アイルランドでは悪魔のように嫌われているクロムウェルだが、その役を少ない髪振り乱し、声を枯らして演じるリチャード・ハリスは、生まれも育ちもアイルランド。【マン】


ケン・ラッセルのサロメ Salome's Last Dance
1987年 イギリス 90分 R
ケン・ラッセル監督 グレンダ・ジャクソン ストラトフォード・ジョーンズ ニコラス・グレイス イモージェン・ミラ・スコット ダグラス・ホッジ

『サロメ』はご存じのとおり異端のアイルランド人作家オスカー・ワイルドの戯曲だ。他にサロメを上演しようとする人物を描いた映画に「ダブリンバスのオスカー・ワイルド」がある。【マン】


ケン・ラッセルの白蛇伝説 The Lair of the White Worm
1988年 イギリス、アメリカ 94分 R
ケン・ラッセル監督 アマンダ・ドノホー ヒュー・グラント キャサリン・オクセンバーグ ピーター・キャパルディ サミ・デイヴィス ストラトフォード・ジョーンズ ポール・ブルック クリストファー・ゲイブル

大蛇退治の伝説のあるマーシアの地で4人の若い男女が恐竜の頭骨を発掘した…。古代マーシアは今のイングランド中部なのだが、ピーター・キャパルディがキルトを着てバグパイプを吹きながらアンチ・キリストの悪魔の象徴である大蛇と闘う。ブラム・ストーカーの怪奇小説が下敷きだが、モンスター、スプラッター、エロチックな幻覚シーン、モンティ・パイソン風の笑いなどが満載で、ケン・ラッセルが嫌いな人でも案外楽しめる。スコットランド風パーティでロック調民謡のThe d'Ampton Wormをライブ演奏するバンドについてご存じの方、情報下さい。【マン】


黒の狙撃者 Confessional
1989年 イギリス 185分 (TV)
ゴードン・フレミング監督 キース・キャラダイン ロバート・リンゼイ ワレンティナ・ヤクニナ ロバート・ラング アーサー・ブラウス ニール・トビン サイモン・チャンドラー デヴィッド・デ・キーザー アンソニー・クエイル

KGBが育て上げたスナイパー、コードネーム「クーフーリン」(アイルランド・アルスター神話の英雄の名)はカトリック司祭になって南北アイルランド国境付近に赴任し、IRAの名をかたって要人暗殺を繰り返す。事態を重く見た英国政府公安はIRAとの協力を決意。仲介役として元IRA急進派のリーアム・デヴリン(キース・キャラダイン)を呼び、さらに「クーフーリン」の目撃者のロシア女性を亡命させる。デヴリンと「クーフーリン」はアメリカ・ボストン留学時代からの友人だった。身元が割れKGBにも切り捨てられた「クーフーリン」は復讐のために訪英中のローマ教皇殺害を企てる。心のない共産主義の殺人マシンのはずの「クーフーリン」が良心の呵責からカタストロフィーを来たすまでが、テレビ・ドラマの特質を生かして丹念に描かれる。「アイルランドが君に罪を犯させるのなら、アイルランドこそが悪魔だ」という考えさせられる台詞もある。「密約の地」と同じジャック・ヒギンズ原作。【マン】


光年のかなた Light Years Away / Les Annees Lumieres
1980年 フランス、スイス 107分 英語/フランス語
アラン・タネール監督 トレヴァー・ハワード ミック・フォード

別にアイルランドである必然性はないのだが、どことも知れぬアイルランドの荒野の廃車置き場で、修行者(あるいはドゥルイドと弟子)のように暮らす老人と若者の物語。【マン】


拷問の密室(伯爵の淫らな毒牙は鮮血にまみれた) Tourture Dungeon
1970年 アメリカ 80分 アダルト
アンディ・ミリガン監督 ジェレミー・ブルックス スーザン・キャシディ パトリック・ディロン ニール・フラナガン リチャード・メイソン

日本ではレンタル・ビデオなるものが大都市に出始めた頃に一度日の目を見たきりで、今さら探しても多分どこにもないだろう。ニューヨーク・スタテン島の空き地(一説にゴミ焼却工場跡)で16ミリで撮った超低予算のクズ・フィルムだが、ペヨトル工房発行の『夜想』に特集される(18号、1986年)ほど、今や伝説となった。ぺらぺらの化繊のドレスに紋章らしきアプリケを貼り付けただけの衣装を着て、とんがり帽子を被ったヒロインの名は、私の記憶では、わざとらしくも「ヘザー・マクレガー」。スコットランドのとある伯爵の城に腰元として入った彼女は、塔の奥に拷問室を発見し、血みどろの殺人を目撃し、黒いフンドシ一丁の覆面男達に追われ、レイプされ…書いていても何が何だかわからないし、どんな結末だったか忘れたし、だいいちストーリーなぞあってなきがごとく、思いつきで回したフィルムを繋いだだけみたい。なぜコスチューム・ホラーかという問いにアンディ・ミリガンは答える。「私が時代ものを手がけるのは、何度でも世に送り出せるからだ。ミニ・スカートを使ってみたまえ。期間はせいぜい2年間に限定されてしまう。だが、時代ものならば、何度でも再公開できるし、いつつくられたかもわからなくなるのだ。」(前掲書、菊地秀行氏の論文より引用)

町山智浩「秘宝の殿堂:秘宝紳士録黎明篇:アンディ・ミリガンの巻」(『映画秘宝』vol.30=2002年6月号)によると、ジミー・マクドノー著「ゾっとする奴」The Ghastly One、というアンディ・ミリガン監督の伝記があるのだそうだ。町山氏の文章から要約すると、ミリガンは元々ニューヨーク・ブロードウェイ南の服飾街でドレスを自作販売するデザイナーだったが、16mmカメラを買って映画作りに転身。「どの作品もミリガンの衣装を使った時代モノだが、背景にはミニスカートの通行人が写っていたりする」らしい。ミリガンのフィルムを買ってくれるのは42丁目のポルノ映画館のウィリアム・ミシュキンだけで、ミリガンはミシュキンの要求で女の裸も撮ったが、「裸になってもカメラは壁や足ばかり写すし、たいてい投げやりな方法で殺されてしまう。」撮影中もミリガンは女優を言葉や暴力で虐待した。というのは彼はゲイで真性の女嫌い、彼の回りにも変態や性的問題ありの男たちが集まって映画を作っていた。モラルの乱れた近親相姦の家庭に育ったせいらしい。その後ミリガンはハリウッドに移り、1991年にエイズで死んだ。日本では「拷問の密室」の他に「血に飢えた断髪魔」Bloodthirsty Butchers(1970年)というのがビデオで出たことがあるらしい。【マン】


北海ハイジャック ffolkes
1980年 アメリカ 99分
アンドリュー・V・マクラグレン監督 ロジャー・ムーア ジェームズ・メイソン アンソニー・パーキンズ マイケル・パークス デヴィッド・ヘディソン ジャック・ワトソン リア・ブロディ フェイス・ブルック

オックスフォード英国家名辞典で調べると、小文字のf2つで始まるフォークスという名はドゥムズデイ・ブック(1086年)にも載った由緒正しい家名のようだ。ロジャー・ムーア演じるルーファス・エクスカリバー・フォークスはスコットランドの古城に住み、猫を愛し、刺繍を趣味とし、スコッチ・ウィスキーをらっぱ飲みし、そして何よりの女嫌いだ。なのに彼の前に現われるのは首相から水夫に至るまで、有能な女、女、女。フェミニズム信奉者も彼のことを大目に見よう。ノルウェー沖の油井に爆薬を仕掛けて英国政府から大金を揺すり取ろうとした悪者をやっつけるのだから。【マン】


ショウほど素敵な商売はない There's No Business Like Show Business
1954年 アメリカ 117分
ウォルター・ラング監督 アーヴィング・バーリン音楽 エセル・マーマン ドナルド・オコナー マリリン・モンロー ダン・デイリー ジョン・レイ ミッチ・ゲイナー ヒュー・オブライアン フランク・マクヒュー

ボードビルの舞台に立ち続けるドナヒュー一家親子5人の中心は、しっかり者でちょっと頑固な母(エセル・マーマン)。新人女優マリリン・モンローとの共演が息子達の心をぐらつかせ、やがて一家はばらばらに。1920年代を中心に米英両国で、アイルランド系ボードビリアンの活躍には目覚ましいものがあったようだ。ドナヒュー一家の得意の出し物の中にはもちろん、タータンチェックのキルトを着てのスコットランド風も含まれる。【マン】


魅せられて Stealing Beauty
1996年 フランス、イタリア、イギリス、アメリカ 119分 R
ベルナルド・ベルトルッチ監督 リヴ・タイラー ジェレミー・アイアンズ シニード・キューザック ドナル・マッキャン ステファニア・サンドレッリ ジャン・マレー D・W・モフェット

作品そのものにはアイルランドもスコットランドも関係せず、トスカーナの田園風景が美しい。ただ、家主夫婦役のドナル・マッキャンとシニード・キューザックがともにアイルランド人、そしてシニードの実生活上の夫がジェレミー・アイアンズだ。末期癌でホスピスに向かう彼の手を握るシーンでしみじみと息の合ったところを見せる。ドナル・マッキャンも役柄どおり芸術家の目をしている。撮影監督は長らくベルトルッチの良き引き立て役だったヴィットリオ・ストラーロからダリウス・コンジに交代したが、奥行きのあるフィルムは遜色ない。「ネフュー」参照。【マン】


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