IRISH-ON-FILM INDEX


ライアンの娘 Ryan's Daughter
1970年 イギリス 176分
デヴィッド・リーン監督 サラ・マイルズ ロバート・ミッチャム トレヴァー・ハワード クリストファー・ジョーンズ ジョン・ミルズ レオ・マッカーン バリー・フォスター

日本ではキネ旬2位(同年度1位はヴィスコンティの「ベニスに死す」)と評価が高いが、英米では賛否好悪相半ばした。アイルランド西部のうつろい易い気象と刻々変化する光を捕えたカメラワーク(フレディ・A・ヤング、アカデミー撮影賞受賞)が描き出した自然、その自然現象に呼応するかのように英軍将校との情事に身を委ねる若い人妻の描写が、アイルランドの人間がいかにもプリミティヴで、自然に屈服するかのような悪い印象を与えたせいらしい。キリスト教的な人間中心の世界観が行き詰まりを見せ、ケルトとエコロジーが結びついてブームとなっている今なら、評価が違ったかもしれない。映画の時代背景は1916年、イースター蜂起が失敗、再蜂起を目論む独立運動家達がドイツからの密輸武器を拾い上げるために大西洋岸の寒村にやって来る。独立派シンパの村人の中、酒場の主人ライアンは英軍守備隊と密かに通じていた…。ロケ地はディングル半島。【マン】


U2/魂の叫び U2: Rattle and Hum
1988年 アメリカ 99分
フィル・ジョアノウ監督

このページを開けてみた人に知らない人はいないだろうが、U2は80年代にショウビズ界の頂点に登り詰め、今日のアイルランド・ブームの大きな推進役となったアイルランドのロック・グループ4人組。ダブリンからニューヨークへ、そしてアメリカ大陸横断ツアーに同行し、オン・ステージとオフ・ステージの彼らの姿を追う叙情的なドキュメンタリーだ。アメリカでロックンロールとブルースのルーツを求める巡礼としての姿も描かれる。1999年にジョアノウ監督の自伝的ドラマ「ウィズアウト・ユー」が作られ、再びメンバー全員出演している。【マン】

U2のアメリカへの殉教の旅であるアメリカ公演を追ったドキュメンタリー。大阪では今は亡きシネラマのOS劇場でロードショー公開されるという今では考えられない快挙(無謀ぶり)だったが、当時はいかににわかU2 fanが多かったかということの証しでもあった。オープニングはビートルズのカバー「ヘルター・スケルター」。それが終わるとアイルランドの風景が映し出される。海から陸へとカメラを寄せていく空撮が素晴らしい。アメリカを舞台にしていても彼らがアイルランドのバンドだということを再認識させられる感動もののシーンだ。メンバーがゴスペル教会やプレスリーの生家を訪れるが、皆自然体でとてもいい感じ。"Heartland"は"RATTLE AND HUM"の中でもっともU2らしい曲だが、メンバーがエルビス・プレスリーの生家を訪れるシーンにこの曲が被さっている。"Rock'n Roll stop the traffick"とラクガキした有名なセントラル・パークでのコンサートも収録されているが、これは当時CCNでニュースにもなった。映画には収録されていないが、ボノはアイルランドの国旗を見つけた時、突如としてIRAを非難。"Sunday Bloody Sunday"のシーンでも「革命などクソ食らえ!」と振り絞るように叫ぶボノの姿は鳥肌ものだった。この映画を撮ったフィル・ジョアノは、99年末にはU2のドキュメンタリー映画を撮る監督のロマンスを描いた「ウィズアウト・ユー」が公開された。収録曲 1. Helter Skelter / 2. Van Diemen's land / 3. Desire / 4. Exit / 5. Gloria / 6. I still haven't found what I'm looking for / 7. Silver and gold / 8. Angel of harlem / 9. All along the watchtower / 10. In god's country / 11. When love comes to town / 12. Heartland / 13. Bad / 14. Where the streets have no name / 15. MLK / 16. With or without you / 17. Bullet the blue sky / 18. Running to stand still / 19. Sunday bloody sunday / 20. Pride (In the name of love) / 21. All I want is you【erin】


ミラーズ・クロッシング Miller's Crossing
1990年 アメリカ 115分 R
ジョエル・コーエン監督 ガブリエル・バーン アルバート・フィニー マーシア・ゲイ・ハーデン ジョン・タトゥーロ ジョン・ポリトー J・E・フリーマン マイク・スター アル・マンシーニ マイケル・ジェター

禁酒法下の1929年の東部が舞台のギャング映画だが、コーエン兄弟のセンスで現代的味付けがされている。同じユダヤ女を愛したことから仲間割れするアイリッシュ・マフィアを、ガブリエル・バーンとアルバート・フィニーという新旧の名優が渋くスタイリッシュに演じる。【マン】


マッキントッシュの男 The Mackintosh Man
1973年 アメリカ 105分
ジョン・ヒューストン監督 ポール・ニューマン ドミニク・サンダ ジェームズ・メイソン ハリー・アンドリューズ イアン・バネン ナイジェル・パトリック マイケル・ホーダーン

007のようなアクション主体ではないスパイ映画。英国諜報部の幹部マッキントッシュが雇ったアメリカ人のスパイ(ポール・ニューマン)が薬物で眠らされ、連れて来られた屋敷から脱出してみると、そこはまるで地球上ではない別世界のような光景。何層にも重なり合う石垣を乗り越えて追っ手を振り切り、辿り着いた港町で少年を捕まえてここはどこかと質問しても、聞いたこともない言葉が返ってきて面喰らうばかり。種を明かせばそこはアイルランド西部のゴールウェイの近くだったのだ。消防士の役でドナル・マッキャンがエキストラ出演している。ところでタイトルのマッキントッシュだが、ポール・ニューマンがマッキントッシュ・コートを着て登場するからかもしれない。以下は小池滋「普通名詞になった人名」(『図書』1998年2月号、岩波書店)よりの引用。「マッキントッシュとは防水加工を施した布地、さらにそれを使ったコートを意味している。そして、もともとはそうした防水加工法を開発した(1823年)スコットランド生まれの化学者の名であった。」【マン】


エンジェル・ベイビー Angel Baby
1995年 オーストラリア 105分 R
マイケル・ライマー監督 ジョン・リンチ ジャクリーン・マッケンジー コリン・フリエルズ デボラ・リー・ファーネス ダニエル・ダペリス ロビン・ネヴィン

この「エンジェル・ベイビー」という映画は、アイルランド、も感じなかったけど、オーストラリア、というのも、ほとんど感じませんでした。最近、オーストラリア映画はかなり注目で、そういう面でも気合いが入ってたのですが、そういう意味では、かなり無国籍な感じがして、ちょっと拍子抜けでしたが、逆にそういう設定が、共感を生んでたような気がします。エンヤの音楽はかなり重要なシーンで使われていて、印象にも残りました。それ以外にも、主題歌を作っているギャヴィン・フライデーもアイリッシュです。彼は、「父の祈りを」でもU2のBONOと共作していて、映画界でも結構注目の人だとは思います。でも、アイルランド、という点では、あまり感じさせない気が・・・【ici】


波止場 On the Waterfront
1954年 アメリカ 108分
エリア・カザン監督 マーロン・ブランド カール・マルデン エヴァ・メアリー・セイント リー・J・コッブ ロッド・スタイガー パット・ヘニング レイフ・エリクソン ジェームズ・ウェスターフィールド トニー・ガレント ジョン・ハミルトン ネヘマイア・パーソフ

この映画が作品賞・監督賞を含むアカデミー賞8部門を受賞したとは、共産党からの転向を余儀なくされ「密告者」の汚名を敢えて着たアナトリア系移民エリア・カザンとアメリカ資本主義帝国との妥協だと言えなくもない。はじめに伝書鳩の名前をダニー・ボーイと呼ぶことから、主人公マーロン・ブランドとその周囲の人々がアイルランド系であることが示される。(ちなみに実際のブランドがアイルランド系だと思っている人もいるようだが、正しくはフランス系らしい。)主人公は元ボクサーの沖仲仕で、ニューヨーク・ブルックリンの波止場を牛耳るヤクザ(アイルランド系、イタリア系、スラブ系の混成部隊で、マフィアと呼ぶほど強大な組織ではない)の幹部の弟だ。労働組合はあるにはあるが機能せず、沖仲仕を苦しめる不正や暴虐に対して、ヤクザの報復を恐れる彼らは見ざる言わざるを決め込んでいる。カトリック教会の血の気の多い神父だけがひとり拳を振り上げる。カザンの最初の長編「ブルックリン横丁」が社会派色を帯びながらもごく普通の映画であるのに対して、ニューオーリンズ港を舞台に東欧からの密入国者が得体の知れない恐怖(映画の中ではそれはペストだが、共産主義を暗示している)を持ち込むという「暗黒の恐怖」(Panic in the streets, 1950)や、当局への情報提供(密告)を奨励するようなこの映画はどう見ても普通じゃない。マルコム・ジョンソンの記事を下敷きにしたとカザン自身は言ったのだが。【マン】


マイ・レフトフット My Left Foot
1989年 アイルランド 103分 R
ジム・シェリダン監督 ダニエル・デイ・ルイス ブレンダ・フリッカー レイ・マキャナリー ヒュー・オコナー フィオナ・ショウ シリル・キューザック エイドリアン・ダンバー ルース・マッケイブ アリソン・ウェラン

1930年代のダブリン、煉瓦職人の子沢山家族に生まれ育ったクリスティ・ブラウンは脳性小児麻痺でかろうじて動かせるのは左足だけ。口もきけない息子が左足で「MOTHER」と書いてみせた時の父母の驚きと喜びは、この映画を観る者の喜びでもある。だが大人になってからのクリスティは結構気難しくて、ダニエル・デイ・ルイスは観る者の感情移入を拒むエキセントリックな演技でアカデミー賞を取った。【マン】


ロッキー Rocky
1976年 アメリカ 119分
ジョン・G・アヴィルドセン監督 シルヴェスター・スタローン タリア・シャイア バート・ヤング カール・ウェザーズ バージェス・メレディス セイヤー・デヴィッド

ロッキーの恋人のエイドリアンがアイルランド系だということをこのあいだ初めて知りました。実家の肉屋さんの社名が「シャムロック精肉工場」ですもんね。【寺尾淳】


タイパン Tai-Pan
1986年 アメリカ 127分 R
ダリル・デューク監督 ブライアン・ブラウン ジョアン・チェン ジョン・スタントン ティム・グィニー ビル・リードビター ラッセル・ウォン カイラ・セズウィック バート・レムゼン ジャナイン・ターナー

「将軍」のジェームズ・クラベル原作のエキゾチック歴史冒険大河小説の映画化だが、アメリカの評価では「つまらない」とか。150年前、中国にアヘンを密輸してアヘン戦争を起こし、奪い取った香港に居座ることになったスコットランド商人の話。詳しくは「M&Aタイパンと呼ばれた男」参照。


黄昏に燃えて Ironweed
1987年 アメリカ 144分 R
ヘクトル・バベンコ監督 ジャック・ニコルソン メリル・ストリープ キャロル・ベイカー マイケル・オキーフ ダイアン・ヴェノーラ フレッド・グウィン マーガレット・ホィットン トム・ウェイツ ジェイク・デンジェル ネイザン・レイン ジェームズ・ギャモン ジョー・グリファシ

1938年のニューヨーク州オールバニーの浮浪者(bumという)が主人公で、1910〜20年代の回想が挿入される。20余年ぶりに家に帰ってみると、アイルランド系家庭の暖かさで迎え入れられるが、再び酒浸りのルンペン生活に戻ってゆく。癌で余命幾許もないルンペン役でニューヨークの吟遊詩人トム・ウェイツが出演。【マン】


青い夜明け The Dawning
1988年 イギリス 97分
ロバート・ナイツ監督 アンソニー・ホプキンズ ジーン・シモンズ トレヴァー・ハワード レベッカ・ピジョン ヒュー・グラント タラ・マッゴウラン

(公開当時のパンフレットより抜粋引用。)1920年、南アイルランド。アングロ・アイリッシュの地主階級が没落し、IRAが台頭してくるそんな大戦直後の渦中で、18歳の少女は自分自身を発見し、精神の夜明けを迎えていく・・・。アイルランドの力強い自然、確かな演技陣による見事なアンサンブルは、少女の成長、そして揺れるアイルランドの運命を象徴的に際立たせている。主役のレベッカ・ピジョンは、"ルビー・ブルー"というバンドのヴォーカルを担当する歌姫、と紹介されています・・・そんなバンド、知りませんが・・・。【ici】

原作はジェニファー・ジョンストン。アイルランドの中で複雑な歴史を持ち、今まさに絶滅してゆくアングロ・アイリッシュの心情をきちんと描いた映画は少なく、今後の新作も絶望的。その意味で貴重な一編。細部に凝ったダブリン・ロケが1920年当時の雰囲気を再現。【マン】


赤毛布恋の渦巻(あかげっとこいのうずまき) Riley the Cop
1928年 アメリカ 71分 サイレント
ジョン・フォード監督 J・ファレル・マクドナルド ルイーズ・ファゼンダ ナンシー・ドレクセル デヴィッド・ロリンズ

ニューヨークの中年警官ライリーが主人公。アイルランド系の彼はドイツ系の同僚といつも張り合っている。のんびりし過ぎたライリーは職務怠慢で停職になるが、身分違いの恋に悩みドイツに行った若いカップルの身柄を引き取りにドイツに行き「赤毛布ぶり」を発揮する。「フォードも荒けずりなタッチで気らくな場面展開を見せ、人情喜劇としてのうま味もちらほらのぞかせているので、程度低いナと思いながらも腹を立てずに見ていられた」と双葉十三郎『ぼくの採点表:戦前篇』にある。【マン】


あの頃に帰りたい How Many Miles to Babylon?
1982年 イギリス 110分
モイラ・アームストロング監督 ダニエル・デイ・ルイス クリストファー・フェアバンクス ショーン・フィリップス バリー・フォスター

ダニエル・デイ・ルイス初の主演作で、テレビデビュー作。アングロ・アイリッシュ(と思われる)地主階級の一人息子と、地元の労働者階級の少年との、強い絆を描いています。それは、友情というより、愛情と呼べるもので・・・。少年が仲間たちと夜な夜な音楽に酒にダンスにと楽しそうに過ごしているシーンや、ウィックロウで撮影された自然が、アイルランドを感じさせます。「青い夜明け」と同じ原作者、ジェニファー・ジョンストンです。【ici】


アパッチ砦 Fort Apache
1948年 アメリカ 127分
ジョン・フォード監督 ジョン・ウェイン ヘンリー・フォンダ シャーリー・テンプル ペドロ・アルメンダリス ジョン・エイガー ウォード・ボンド ジョージ・オブライエン ヴィクター・マクラグレン アンナ・リー イレーヌ・リッチ ディック・フォーラン ガイ・キッビー

ジョン・フォードの騎兵隊3部作の第1作。フォード作品に欠かせないヘンリー・フォンダとジョン・ウエインが共演しており、脇役にもおなじみのフォード一家がそろって好演。軍隊の出世コースからはずれた新任の騎兵隊隊長のヘンリー・フォンダと先任の大尉のジョン・ウエインと二人を取り巻く人間模様が悲劇的な結末のなかに詩情豊かに描かれている。カスター将軍をイメージした騎兵隊のインデイアンの大群の中への突撃シーンはカメラワークが素晴しい。アイルランド民謡が多くつかわれている。「黄色いリボン」のメロデイはこの映画ですでにつかわれているし、庭の千草もちょっと出てくる。下士官主催のパーテイでのグランド マーチでつかわれているギャリー・オウエン(Garry Owen)の曲は効果的。西部劇での最高のダンスシーンではないか。なお、このギャリー・オウエンはエロール・フリン主演の「壮烈第七騎兵隊」(1942 They died with their boots on)でカスター将軍の騎兵隊の隊歌としてつかわれている。フォードらしいアイリッシュのユーモアあふれるシーンは酒好きのアイリッシュの軍曹3人組が新兵をえこひいきするシーン。テイッペラリ、コーク、スライゴ出身はいるかと聞き、特別扱いするところは、当時多くのアイルランドからの移民が辺境の騎兵隊員になっていたかをあらわしている。ワード・ボンドのいかにもアイルランド人らしい頑固さと暖かさが印象に残る。【野村雅之】


ウィドウ Widow's Peak
1994年 アメリカ 101分
ジョン・アーヴィン監督 ジョーン・プロウライト ミア・ファロウ ナターシャ・リチャードソン エイドリアン・ダンバー ジム・ブロードベント ブリッタ・スミス ジェラード・マクソーリー



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