IRISH-ON-FILM INDEX


デビル The Devil's Own
1997年 アメリカ 116分
アラン・パクラ監督 ハリソン・フォード ブラッド・ピット マーガレット・コリン ルーベン・ブレイズ トリート・ウィリアムズ ウィリアム・アサートン ジョージ・ハーン ジョン・マホニー ケリー・シンガー ジュリア・スタイルズ

北アイルランド紛争の真只中に身を置くIRA実行部隊長フランキー・マグワイヤ(ブラッド・ピット)はロリー・デヴァニーの偽名で単身ニューヨークに潜入、何も知らない真面目が取り柄の警官トム・オメーラ(ハリソン・フォード)の家に下宿する。彼はスティンガー・ミサイル調達のためにIRAシンパ崩れのアイリッシュ・マフィア(トリート・ウィリアムズ)と接触するが…。ニューヨークのアイルランド系アメリカ人の生活が多少の誇張を交えて描かれているが、何よりも、彼ら移民何世代めかのアメリカ人と今もなおアイルランドにある者達との失われた共感がテーマのひとつになっている。古くからの移民とアイルランド分離独立以後の移民とでは、北アイルランド問題に対する意識に大きなギャップがあるといわれる。ニューヨークの他、ダブリンとクロハーヘッドでロケ。IRAのテロを単なる重犯罪扱いした「パトリオット・ゲーム」に満足できなかった人の鑑賞にも耐えると私は思ったのだが、当のアイルランドでは「shameful」と酷評だし、日本人のアイルランド通の評判もめちゃくちゃ悪い。嫌い出すととことんまで、たとえば北アイルランドから来たはずの男の訛がダブリン訛だったりするようなことにも頭にくるらしい。【マン】


マイケル・コリンズ Michael Collins
1996年 アメリカ 133分
ニール・ジョーダン監督 リーアム・ニーソン イアン・ハート ジュリア・ロバーツ エイダン・クィン アラン・リックマン スティーヴン・レイ ジョン・ケニー

アイルランド独立闘争の中心的人物の半生記。英国とアイルランドにとっていまだ生々しい記憶、さらに継続中の問題であり、歴史解釈とコリンズの人物像を巡って両国で賛否両論巻き起こり、同じテーマによるTVドラマが前後して放映されたり、1996年アイルランドはコリンズ・ブームにわいた。分離独立から内戦に至る複雑な歴史が、一流のストーリー・テラーであるニール・ジョーダンの手腕で「見ればわかる」ドラマに仕立てられている。ダブリン・ロケの戦闘シーンの迫力、スティーヴン・レイが演じるスパイのサスペンスフルな活躍など、歴史・戦争スペクタクル、アクション映画としても楽しめる。ただコリンズの人間性の描き方が今いち足りず、ゲリラ戦の先鉾だったコリンズがなぜ条約反対派と対決するに至ったのか、観客は混乱する。身長190cmのリーアム・ニーソンはピンストライプのビジネススーツを着て自転車で駆け回り、ビッグ・フェラ(でかいやつ)とあだ名されたコリンズを熱演したが、当時44歳では31歳で暗殺された青年の顔に見えろと言う方が土台無理。アイルランド自由国初代首相で共和国になってからも長く政権を維持したイーモン・デ・ヴァレラ役のアラン・リックマンが実物の写真にそっくりで怪演。挿入歌"He Moved Through the Fair"を歌っているのはシニード・オコナー。「キング・オブ・フィルム」というオムニバスの中に、ジョン・ブアマンが撮ったこの映画の戦闘シーン撮影現場が収められている。「市街戦」の主人公はマイケル・コリンズがモデル。【マン】


ナッシング・パーソナル Nothing Personal
1995年 アイルランド、イギリス 82分 R
サディアス・オサリヴァン監督・脚本 イアン・ハート ジョン・リンチ ジェームズ・フレイン マリア・ドイル・ケネディ ジェニ・コートニー ルーアリー・コンロイ マイケル・ガンボン ジェラード・マクソーリー ゲイリー・ライドン

1975年IRAとロイヤリスト(プロテスタント)幹部が密かに合意した停戦が幻に終わった実話を、若いロイヤリスト過激分子の暴走に絡めて描いたこの映画は、1994年8月から17か月間の停戦期間に製作されたが、日本での初公開は1995年2月のアイルランド映画祭、その時停戦は再び破られていた。監督とのティーチインではカトリックとプロテスタントのことに質問と意見が終始した。これは宗教戦争ではないということを日本の観客に納得させられなかったのは、オサリヴァンの力量不足なのだろうか。ダブリン・ロケで人影途絶えたベルファストの街路を再現。「フィオナの海」に続いて登場の美少女ジェニ・コートニーにロリータ趣味的人気が集中したが、子供が子供の顔をしていないところに凄味を感じる。リーアム(「キャル」がそのまま親父になったようなジョン・リンチ)が字を手で隠してみせた壁の絵はプロテスタント側の守護神に等しいオレンジ公ウィリアム(カトリックのチャールズ2世を封じ込めるために1688年オランダから招かれて英国王になったウィリアム3世)。ブリティッシュ・ロック、ベルボトムなど70年代の青春が鮮やかに蘇る。【マン】


エマ Emma
1996年 イギリス、アメリカ 120分
ダグラス・マグラス監督 グウィネス・パルトロウ トニ・コレット アラン・カミング ジェレミー・ノーザム ユアン・マクレガー グレタ・スカッキ

ジェーン・オースティンの原作にはダブリン生まれの元気なおばさん(お姉さん)が登場すると【寺尾淳】氏から指摘をいただいている。

ロンドン・ハイベリーが舞台のロマンチック・ストーリー。自称「恋のキューピット」のエマが、友達の幸せのためにとあの手この手を考える。そんなエマが恋に落ちた相手が友達の意中の男性だと気づいて...。原作に登場するというお話の「ダブリン生まれの元気なおばさん」について映画ではそういう説明は出てきませんが、もしかしたらエマの相談相手のウィンストン夫人のことでしょうか?【島崎】


パトリオット・ゲーム Patriot Games
1992年 アメリカ 116分 R
フィリップ・ノイス監督 ハリソン・フォード アン・アーチャー パトリック・バーギン ショーン・ビーン リチャード・ハリス ゾーラ・バーチ ジェームズ・アール・ジョーンズ ジェームズ・フォックス サミュエル・L・ジャクソン ポリー・ウォーカー

映画ではぼかされているが、トム・クランシーの原作では、暗殺されかけたのはチャールズ皇太子とダイアナ妃と2人の王子、襲ったのはIRA内部の過激分子と、実名フィクションになっている。「レッド・オクトーバーを追え」ではアレック・ボールドウィンが演じた元CIA分析官ジャック・ライアンはアイルランド系のキャラクターであり、ミスター・アメリカといった感じのハリソン・フォードだが、父はアイルランド系、母はロシア系ユダヤ人だそうだ。「デビル」ではニューヨーク市警のアイルランド系警官としてIRAのテロリストと対決する。アイルランドでのシーンはほとんど現地ロケ。IRA幹部の役でリチャード・ハリスが登場する。挿入曲はもともと「ハリーズ・ゲーム」のテーマ曲でクラナド。【マン】


キャル Cal
1984年 イギリス 102分 R
パット・オコナー監督 ヘレン・ミレン ジョン・リンチ ドナル・マッキャン ジョン・カヴァナー レイ・マキャナリー ステヴァン・リムカス キティ・ギブソン

舞台はベルファストとその近郊。カトリックの孤独な若者とプロテスタントの殉職警察官の未亡人との悲恋物語だが、決して甘ったるい映画ではなく、憎しみの街ベルファストの悲劇に胸が掻きむしられるような、パット・オコナー初期の名作だ。プロデューサーはデヴィッド・パットナム。ヘレン・ミレンはどちらかといえば地味なこの映画でカンヌ映画祭主演女優賞を取った。【マン】

(1998/3/5)「キャル」や「ローカル・ヒーロー」の映画音楽が詰まった「スクリーンプレイング」というCDをご存知ですか?演奏はマーク・ノップラー(あのダイヤストレイツの)。発売元:日本フォノグラム株式会社、品番:PHCR1223です。【S杉山】


ローカル・ヒーロー/夢に生きた男 Local Hero
1983年 イギリス 111分
ビル・フォーサイス監督 ピーター・リーガート バート・ランカスター フルトン・マッケイ デニス・ローソン ピーター・キャパルディ ジェニー・シーグローヴ

社長(バート・ランカスター)の命令を受けたその名もマッキンタイアというエリート社員が、石油コンビナート用地としてスコットランド北端の漁村を買収しに行く話。住民の反対に遭うだろうと思いきや…。経済格差に悩む過疎地域、スコットランドが抱える社会問題をうまく描き出している。ビル・フォーサイス自身がスコットランド人であり、完璧なスコットランド田舎映画で、オフビートがお好きならお勧めの一本。北極圏に近いとあって夜空を流星雨やオーロラが彩るのも、憧れを掻き立てる。マーク・ノップラーによるテーマ曲はルポ番組などによく使われるので、聞いたことがある人も多いだろう。とぼけた税理士ゴードン・アーカードを好演のデニス・ローソンは今をときめくユアン・マクレガーの叔父さん、1970年代の「スターウォーズ」シリーズにその他大勢役でレギュラー出演していたようだ。プロデューサーはデヴィッド・パットナム。【マン】

(1998/3/5)「キャル」や「ローカル・ヒーロー」の映画音楽が詰まった「スクリーンプレイング」というCDをご存知ですか?演奏はマーク・ノップラー(あのダイヤストレイツの)。発売元:日本フォノグラム株式会社、品番:PHCR1223です。【S杉山】

(1998/11/2)「ローカル・ヒーロー」のパーティのシーンでバンドの男の子が笛で演奏してる曲名が知りたいんです。映画ではワルツを踊る時のBGMになってます。ヘレナ・ボナム・カーター主演の「死の愛撫」でも、冒頭の印象的な海岸線をなぞる俯瞰映像の後ろで流れています。主人が、スコットランドに行った時、(「ローカル・ヒーロー」のロケ地のペナンと「世界のはてに」のダンカンスピン岬に行った)地元の方に歌って曲名を教えてもらい、CDを購入したのですが、間違っていました。スコットランド民謡のCDを買いあさったのですが、入ってないんですう。一回、テレビ東京のドキュメンタリー番組で使われてたこともあるので、市販されてるのではないかと思うのですが、ご存じないですか? 【ぴょんちゃん】

(1998/11/12)「ローカル・ヒーロー」のそこで使われていた曲!その名は「Mist covered mountains」と言います。どこかで「霞にけむる山々」と解説されていましたが、映画の様に打ち寄せる波の音とアレンジされてもたまらなく良いですよね〜。これは結構伝統的な曲らしく、バグパイプでも演奏されます。私の持っている CDコレクションの中ではこの曲をバグパイプで、それにかぶせる様にホルンで「グリーンスリーブス」を伴奏(?)するのがあります。涙ものです!(ウッ!自慢してしまった。)もったいぶりましたが、ご購入は簡単!「マークノップラーのスクリーンミュージックCD」というのがあります。そこに入ってますよ。【S杉山】

(1998/11/25)渋谷の黄色い看板のCD屋さん(名前ド忘れ)で「Local Hero」の Re-Master版なるCDを発見! 思わず購入してしまいました。輸入物で¥1,600台。これも良いですよ。ついでに訂正ですが、前回のメールで「Mist covered mountains」としたのは正式には「The Mist Covered Mountains」でした。ただダンスの時にアコーデオンで弾いていたのがこれで、少年が笛で吹いていたのは映画のテーマ曲「Going Home」でした。どちらもマーク・ノップラーのCDやRe-Master版には入っています。【S杉山】


フィオナの海 The Secret of Roan Inish
1994年 アメリカ 103分
ジョン・セイルズ監督 ジェニ・コートニー アイリーン・コルガン ミック・ラリー リチャード・シェリダン ジョン・リンチ スーザン・リンチ

アイルランド北西部ドネゴール州で撮影した最果ての風景と民謡調の音楽が旅心を刺激する。このアイルランド民謡調の音楽だが、じつはジョン・セイルズ映画のレギュラー・スタッフとして、「セコーカス・セブン」ではカントリー、「メイトワン1920」では労働歌とゴスペル、「エイトメン・アウト」ではジャズ、「パッション・フィッシュ」ではケイジャン、「ローンスター」ではロックといった具合に極めてアメリカ的な音楽を提供している器用なミュージシャン、メイソン・ダーリングのオリジナルだ。原作はロザリー・フライの『ロン・モール・スケリーの秘密』 The Secret of Ron Mor Skerry。スケリーというのは岩でできた小さな島、岩礁のことで、ケルト語ではなくアングロ・サクソンを含む北部ゲルマン系の言葉。日本の羽衣伝説にも似たアザラシ女房の伝承だが、本来はスール・スケリーを始めスコットランド北方沖に点々と浮かぶ小島にまつわる伝承で、ケルトよりむしろスカンジナヴィア(ヴァイキング)文化に属するようだ。赤ん坊の弟が波にさらわれアザラシの世界に行ったというのは、近代まで続いた農漁村部の貧困の中で、口減らしのための嬰児遺棄というアイルランド女性が負わされた十字架、その弟をまだ幼い姉が取り戻すというのは、新しい世代のアイルランド女性が立ち上がる姿を表現しているというのが大野光子氏の解釈(「アイルランド文化研究会ニュースレター」第3号所収)。【マン】


トレイン・スポッティング Trainspotting
1995年 イギリス 93分 R
ダニー・ボイル監督 ユアン・マクレガー ユエン・ブレムナー ジョニー・リー・ミラー ケヴィン・マッキッド ロバート・カーライル ケリー・マクドナルド ピーター・マラン スーザン・ヴィドラー ポーリン・リンチ

"We're the lowest of the low. Most people hate the English. I don't. They're just wankers. We're colonised by wankers. We couldn't even find a decent race to be colonised by." (wankerという単語が辞書に載っていないのだが、スコットランドの立場を言い当てた名セリフ。)同郷のスター、ショーン・コネリー・フリーク、それも007のコネリーしか認めない(「薔薇の名前」は辛うじて認めるが、「アンタッチャブル」のアカデミー賞はお情けで貰ったに過ぎないと言う)こだわりの若者が登場する。【マン】

(2000/3/20)こんちは.はじめまして.ごーだと申します.最近イギリス映画のファンでして,トレインスポッティングの欄も見たんですけど,wankerの日本語訳.辞書にはなかなか載らないと思います.はっきり言うと,「オナニー野郎」ぐらいがちょうどいいと思いますが.なんかくだらない突っ込みでしたか.すみません.それでは.【ごーだ】


シャロウ・グレイブ Shallow Grave
1994年 イギリス 94分 R
ダニー・ボイル監督 ケリー・フォックス クリストファー・エックルストン ユアン・マクレガー ケン・スコット キース・アレン コリン・マックレディ

計画を実行した3人が新年を祝うパーティはホグマニーと呼ばれるもので、ダンスと酒で大晦日から新年に大騒ぎする。踊られていたダンスはスコッティッシュ・カントリー・ダンスの一種で確か「ストリップ・ザ・ウィロー」。パートナー、2番目の異性、またパートナー、3番目の異性、またパートナー、4番目の...とぐるぐる回転を繰り返し、上から「柳のように?流れてくる」という踊り。【S杉山】

人影乏しいグラスゴウの住宅地が舞台のミステリー仕立てのブラック・ユーモア。一瞬だがユアン・マクレガーが「ウィッカーマン」のビデオを観るシーンがある。


ウィッカーマン The Wicker Man
1973年 イギリス 88分/102分 R
ロビン・ハーディ監督 エドワード・ウッドワード クリストファー・リー ブリット・エクランド ダイアン・シレント イングリッド・ピット リンゼイ・ケンプ

生贄を閉じ込めた巨大な人形が炎に包まれているスチルが、ケルト文明を解説した本によく使用されるので、古代ケルトに興味がある人でタイトルだけは知っているという人も多いだろう。「シャロウ・グレイブ」にユアン・マクレガーがこれのビデオを観るシーンがあるが、1994年夏に欧米でビデオが再リリースされたから、タイミング的には合う。今日では特にアメリカで評価がやたら高く、どのガイドでもmust seeの一品に推されているが、不本意なカットを施されたあげく、完成直後に配給会社が吸収合併されたりその後転売を重ね、オリジナルは散逸状態となった不幸な映画。スコットランドの孤島で起きた少女失踪事件の捜査のために本土から警部が単身やって来るが、島民は捜査に協力せず、不道徳で反キリスト教的な行動の数々が敬虔なクリスチャンの警部を悩ませる。少女の失踪は豊作祈願の生贄を島におびき寄せるための罠で、警部はまんまと火あぶりにされる、というチープなスリラー。そのうえ撮影当時妊娠3か月だったというブリット・エクランドが悩ましげに歌いながら全裸で踊るシーンや、かたつむりの交尾シーン(ロングバージョンのみ収録)、裸の少女達が怪しげな宗教儀式をするシーンがあり、大人の娯楽映画だ。英国で広く祝われてきた5月祭(メイデイ)が、じつはキリスト教以前のケルトの太陽神崇拝(ベルテイン)に起源していることが、島の殿様役のクリストファー・リーの説明や、楽しげな異教の祭の再現?で明かされる。キリスト教徒の警部の眼を通して現代に生き残ったケルトの信仰を邪教扱いにしつつも、その反面、フリーセックスやキリスト教社会の規律に縛られない自由を賛美するような、70年代という時代の勢いを感じさせる。フラワー・チルドレン風にけだるいフォーク調の歌や、中世の世俗歌、ハーディガーディの演奏など、音楽も楽しめる。ダンフリース、ギャロウェイ、Whithorn島でロケ。ダイアン・シレントは当時ショーン・コネリーと結婚していたが離婚、後にこの映画の原作・脚本を書いたアンソニー・シェファーと再婚した。シェファーには他に「探偵スルース」(ローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの緊張した2人芝居で文字通りの演技バトルが見られる)というカルト作品があり、スリラーと祝祭的な要素の取り合わせから構築される、おもちゃ箱をひっくり返したような演劇的空間の異様さは彼の持ち味らしい。【マン】

ウィッカーマン(2006年ニコラス・ケイジ版)参照。

(1999/2/13)貿易の仕事でダブリン、コーク、リムリック、バーミンガム、その他に行きました。アイルランドで映画館に入る暇はなかったのですが、そのかわり全く予期しなかった「へんなもの」を目撃しました。「アンジェラの灰」の舞台である都市リムリックの南郊、ロック・ガー湖畔にストーンサークルがあるのですが、1月31日、日曜日の午後、ぶらりと見物に訪れたところ、少しばかり怪しい風体のおじさん達が、バンから大きな太鼓や薪束を下ろして何やら準備中。「ここで何か宗教行事をやるのか?」と質問すると、よそ者を警戒した顔つきで、でもはっきりと「異教の行事をやるのだ」と返答するではありませんか!さらに「それはインボルクに関係あるか?」と聞いたら、こちらがケルト関係の知識を多少持っていることを知って警戒を解いたのか、「見物してもよい」と言います。それから湖や「巨人の墓」と呼ばれる石器時代の墳墓跡を見物して、約束の午後3時に戻ってみると、ストーンサークルの中央に焚火を焚き、その周りに12人の男女が輪を作って立ち、儀式は始まっていました。遠くから眺めていたら、白いマントを纏って顎ひげを生やした先のおじさんが、私達を手招きし輪に加わるように促します。他の男女の服装はごく普通の洋服ですが、幾人かは亀の甲羅で作ったペンダントをしています。祭司らしいひとりの女性が英語で、天地の創造主に感謝し、祖霊と自然をねぎらい、大地の再生を祈ります。それから手作りのパンケーキと陶製の盃に入れた赤ワインを、天にかかげて祝福してから皆に回します(キリスト教のミサを真似ている)。私達はパンケーキの食べ残しを地面にばら捲き、赤ワインを地面にも注ぎます。さらに女性は、灯心草で作った聖ブリジッドの十字架を示し(2月1日は本来ケルトの祭暦インボルクだが、カトリックでは聖ブリジッドの祝日ということになっている)、その四隅を指して、空・火・地・水の四元素を説明します。さてそれから、私達は大鹿の皮を張った太鼓を囲み、何かわからない言語(ゲール語ではない)の呪文を唱えながら四拍子のリズムでそれを叩きます。それからまた皆で手をつなぎ、歌を歌うのですが、歌は「メリーさんの羊」と「漕げよ漕げ」なのです。最後に全員子供のように歓声を上げて、儀式はおしまい。太鼓から後の部分は、ネイティヴ・アメリカン風なのでした。その後「会員」のひとりの家に招かれてハーブティーを飲みながら話を聞いたのですが、その家では太鼓、トマホーク、ドリームキャッチャー、亀の甲羅のペンダント等、多くのネイティヴ・アメリカン・グッズを見せられました。彼らの話を総合するとどうもこういうことらしいのです。国民の9割以上がカトリックのアイルランド社会ではちょっと逸脱した人々の、古代ケルト風儀式の愛好者サークルがもともとあって、そこに近年アメリカから移住して来た「チェロキー族出身」を自称する女性2人が加わり、祖先信仰や自然崇拝が混交した様子です。マントを着ていたおじさんは中国のタオイズムや日本の神道・忍術にも興味を持っていて、なぜストーンサークルを儀式の場所に選んだのかという質問に、気の流れや結界の考え方で答えてくれました。ケルトの4大祭暦(11月1日、2月1日、5月1日、8月1日)と春秋分、他にもクリスマス等幾つか合わせて年10回ぐらい同じメンバーで集まって儀式をしているそうです。特定の神または女神の名を出して崇めるのではなく、汎神論に近いもののようです。ゴールウェイにはイシス神信仰のサークルがある等、各地の「異教」崇拝グループとの交流がある様子でしたが、中のひとりの女性が「私達はごく普通の市民です」と言った言葉が印象的でした。その後彼らは特別の篭を編み、翌2月1日の夜(偶然満月)ロック・ガーの水を汲み、その聖なる再生の水を各家庭に持ち帰る儀式があるそうですが、私達は遠慮して彼らと別れました。最後に私が「この中にドルイドがいるのか?」と質問すると、ストーンサークルの儀式で祭司をしていた女性が「私がドルイドだ」と名乗り出ました。2月10日、イングランドの宿泊場所でテレビのチャンネル4をつけっぱなしにしていたら、なんと深夜の映画劇場で「ウィッカーマン」(短縮劇場公開版)が始まっちゃって、つい最後まで見てしまいました。これはインボルク(2月1日)ではなく、ベルテイン(5月1日)の儀式がテーマの、日本では「幻の」映画です。(長くなっちゃってすみません。)【マン】

(2000/4/13)ロケ地にはやはり、プロックトンもありました。干潮時にできる入り江の土手を歩くシーンがあり、それは「マクベス巡査」でも出てくるし、あの、スコットランドに不釣合いなパームツリー・・・。ハウイ警部の泊まった宿の外観もなんとなく見覚えがあるし・・・。もし「マクベス巡査」でなく、こっちの映画を先にみてたら、プロックトンのパブに夜ひとりでふらりと入ることはできなかったかも・・・。【pokichi】

(2000/4/25)それにしても、世の中に「ウィッカーマン」のファンて多いんですね。ダグ・ヒルのサイト Scotland the Movie からたどりついたこのHPのロケ地ガイドは、やたらくわしい。Wicker Man Film Review:http://www.sandrew.demon.co.uk/wickerman/index.html(先方にリンクの了解を得ていないので、訪問の際はご自分でアドレス入力してください。)【pokichi】

(2000/10/24) 「ウィッカーマン」に出てきたパブはプロックトンじゃないことも判明。【pokichi】

(2003/2/7)「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」特集につられて『スターログ日本版』(15=2003年冬号)という映画雑誌を買い、シリーズ3本にイライジャ・ウッド演じるホビットの主人公フロドの相棒サムの役で好演しているショーン・アスティンのインタビューを読んでいたら、私にとっては指輪シリーズよりも気になる、次のような記事を見つけてしまいました。「(ショーン・アスティンは)さらに、『ウィッカーマン』の脚本・監督のロビン・ハーディ、製作のピーター・スネル、サルマン役のクリストファー・リーが再び組む『The Riding of the Laddie』で、リーとの共演する可能性もある。「実現して欲しいよ。出来ることは何でもやってるところなんだ。スコットランドに行って、クリストファーやヴァネッサ・レッドグレーブと共演したくてたまらない。今、カントリー歌手を捜してるんだけど、リアン・ライムスだといいな。実現するように、みんなに幸運を祈ってほしいって伝えてくれる?『ウィッカーマン』は素晴らしくて、恐ろしいカルト・クラシック作だ。クリストファーが脚本を送ってくれて、興奮してるんだ」。」この映画の情報を調べても、まだ荒筋も出ていなくて謎ですが、クリストファー・リーとヴァネッサ・レッドグレイヴが夫婦役で、ショーン・アスティンの役名は「説教師」となっており、スコットランドのグラスゴー、ボーダー地方、それとアメリカのオクラホマ州でロケしているようです。【マン】

(2003/8/25)2003/2/7付けの、「ウィッカーマン」の脚本と監督のロビン・ハーディ、制作のピーター・スネル、それに主演したクリストファー・リーが再び組んで映画を撮ると、ショーン・アスティンが興奮気味に語ったといううわさの続編が、今度は『映画秘宝』2003年10月号に出ました。タイトルは2/7のうわさと違って、ずばり「May Day」というらしいです。「『「May Day」は「ウィッカーマン」と同じジャンルの映画だ。続編でも前編でもないが、よく似てる。とても怖い映画で、異教の復活がテーマの一部なんだ』(ハーディ談)敬虔なクリスチャンの男女(男はショーン・アスティン!)がスコットランドの田舎を旅行中、リー翁を指導者と仰ぐ異教徒に遭遇…という基本プロットは、確かにサマーアイル島の事件を彷彿とさせる。サムがサルマンと対決する『指輪物語』裏メニューとしても楽しめそうだ。2004年前半に撮影開始。」
でももっと仰天なうわさはその続き。「一方、ハリウッドではユニバーサルによる『ウィッカーマン』リメイクが着々と進行中。主演はニコラス・ケイジ…。」ニコラス・ケイジは私先日見てきた「アダプテーション」(「マルコヴィッチの穴」で一発大当たりを出した脚本家チャーリー・カウフマンが、天才脚本家のプレッシャーで次作が書けずに悶々としたあげく、とんでもない事件になる映画)で、確かにハゲデブ中年になったし、小心者の演技も案外うまいなあと感心しましたから、ハウイー警部的な役柄にぴったりかもです。でもアメリカ映画でしょ?なんか最後はキリスト教の逆転勝利って筋になるような予感が…。【マン】

(2003/9/2)最近やっと「ウィッカーマン」の日本語字幕つきDVDを購入しました。マンザキさんにお借りしてみてからずいぶんたちますが、ロケ地ガイドもついています。ダグ・ヒルのScotland the Movieとまったく同じ情報ではありますが…。【Pokichi】

(2003/9/2) 我が家ではアメリカ再発ものをアマゾンで購入、日本で出始めてからも「木箱入り」、1年経ずに続いて出た「特別完全版」、とにかく全部買ってます。なんでこんなマイナーな映画を今頃…と思われるかもしれませんが、ウィッカーマンは出れば必ず買う“いいカモ”(ウチみたいな)が日本に少なくとも数百人ぐらいいるから、スティングレイ社も次々出すんだと、わかっていて我が家はまんまとその陰謀にはまっています。私ももうさすがに、買ったものを全部なんか見ていませんのですが、我が家はウィッカーマン教---ドゥルイドの呪いにかかったのか?【マン】


アンタッチャブル The Untouchables
1987年 アメリカ 119分 R
ブライアン・デ・パルマ監督 ケヴィン・コスナー ショーン・コネリー チャールズ・マーティン・スミス アンディ・ガルシア ロバート・デ・ニーロ リチャード・ブラッドフォード ジャック・ケホー ブラッド・サリヴァン ビリー・ドラコ パトリシア・クラークソン

シカゴのナポリ系ギャングの大ボスとして知れ渡ったアル・カポネだが、生まれ育ちはニューヨークのブルックリン。カポネが19歳で結婚したのは隣の街区に住んでいた2歳年上のメイ・カフリンという中産階級のアイルランド系移民の娘で、彼は彼女にベタ惚れで一生添い遂げるのだが(情婦は数えきれないほどいた)この映画にメイは登場しない。カポネが支配した当時のシカゴは汚職天国で、アイルランド系で占められた警察も市政も完全にカポネに手なずけられた。さて映画だが、絶対に買収されないアイルランド系警官ジミー・マローンの役でショーン・コネリーはアカデミー助演男優賞を取った。強いアイルランド訛を生かした抑え気味の演技で、主役のケヴィン・コスナーを完全に食った。【マン】


ザ・ロック The Rock
1996年 アメリカ 135分 R
マイケル・ベイ監督 ショーン・コネリー ニコラス・ケイジ エド・ハリス ジョン・スペンサー デヴィッド・モース ウィリアム・フォーサイス

ショーン・コネリー演じる元英国諜報員ジョン・パトリック・メイソン(コネリーより先にジェームズ・ボンド役の候補に上がったパトリック・マッグーハンとジェームズ・メイソンを足して割ったような名前だ)もまたスコットランド系あるいはアイルランド系キャラクターだという証拠に、傍迷惑なカーチェイスのあげく娘と出会うシーンで、バックにそれっぽいメロディが流れちゃうのだ。【マン】

テロリストがショーン・コネリーに「イギリス野郎め! 俺はアイルランド人だ」と言うセリフがありましたが、ここでコネリーさんに「残念だったな。俺はスコテッシュだ」とでも言って欲しかったです。【erin】


男の闘い The Molly Maguires
1970年 アメリカ 123分
マーティン・リット監督 ショーン・コネリー リチャード・ハリス サマンサ・エッガー フランク・フィンレイ アート・ランド アンソニー・コステロ

19世紀末のペンシルヴァニア州の炭鉱を舞台に、実際に起きた大規模な冤罪事件を、アイルランド系労働者に対する同情たっぷりに描く。資本家側のスパイとして潜入した私立探偵(detective が字幕で「刑事」と訳されたのは正確ではない、実際にはピンカートン探偵社の社員)マッケンナ(リチャード・ハリス)が、テロで資本家転覆を企むアイルランド系炭鉱夫の秘密結社モリー・マグワイヤのリーダーと目されるジャック・キーオウ(ショーン・コネリー)と対決する。同じ移民でも、ウェールズ系の警官がアイルランド系の炭鉱夫に威張り散らしたり、映画の中では序列がある。史実では、炭鉱の所有者であるレディング鉄道の社長は、カトリック教育を受けたアイルランド移民2世、ピンカートン探偵社の社長もスコットランド移民1世で、アングロ・サクソン系の資本家がケルト系移民の労働者を搾取する、という単純な民族差別の構図は、移民国家アメリカには必ずしも当てはまらないことがわかる。詳しくはアイルランド文化研究会で発表済み。【マン】


カジノロワイヤル (007 カジノロワイヤル) Casino Royale
1967年 イギリス 130分
ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ヴァル・ゲスト、ジョゼフ・マッグラス監督 ピーター・セラーズ ウルスラ・アンドレス デヴィッド・ニーヴン オーソン・ウェルズ ウディ・アレン デボラ・カー ウィリアム・ホールデン ジョン・ヒューストン ジャン・ポール・ベルモンド ジャクリーン・ビセット、リチャード・バートン

イアン・フレミングの原作小説は1953年の「カジノロワイヤル」がシリーズ第1作、54年にアメリカでテレビ・ドラマ化された(主役はバリー・ネルソン)。60年にイーオン社のプロデューサー、ハリー・サルツマン(アルバート・ブロッコリの同僚)が007シリーズの映画化権をまとめて買いに来た時、フレミングは「カジノロワイヤル」の権利をたった6000ドルでグレゴリー・ラトフに売って新車を購入した後の祭だった。イーオン社はフレミングの第6作め「ドクター・ノオ」から着手したのが62年。ラトフの死後転々とした「カジノロワイヤル」は、当初企画されたショーン・コネリーの出演は取り消され、路線変更を余儀なくされて、今日見るようなゴージャスにして珍妙なコメディになった。スコットランドのズッコケ・シーン(実際のロケ地はアイルランド)の監督はジョン・ヒューストンが担当。本人もMことマクタリーの役で登場する。マクタリー家のにせ未亡人がわざとらしいハイランド訛で笑わせるが、役の上では本当はフランス女ということになっているデボラ・カーは、本当の本当はスコットランド人なのだ。引退したジェームズ卿(デヴィッド・ニーヴン、彼もスコットランド出身)の代わりに何人もの007がスカウトされ、バカラの名人ピーター・セラーズがニーヴンの屈折した甥ウディ・アレンを追い詰める。ニーヴンはイアン・フレミング自身がジェームズ・ボンド役にと強く望んでいたらしい。フレミングは最後までショーン・コネリーを気に入らず、コネリーもまたボンドを演じ続けることに疲れ果てた。フレミングが生み出したジェームズ・ボンド像はhttp://www.mcs.net/~klast/www/jb_obit.htmlに詳しいが、スコットランド人の父とスイス人の母から生まれたという設定。【マン】


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